「読者として読みたいものを電子書籍で作る」一人出版社、代官山ブックス

2021年より代官山ブックスが発行している電子書籍「金の卵シリーズ」。著者は“売れてない芸人”限定。現在32冊が刊行されているが、シリーズの仕掛人である廣田喜昭氏とは何者なのか。まずは発行元である代官山ブックス立ち上げの経緯を聞いた。

“売れてない”芸人の自伝本「金の卵シリーズ」はなぜ、売れるのか?_1
廣田喜昭/代官山ブックス代表取締役。神奈川県横浜市生まれ、上智大学卒業。書籍の企画・編集のほか、個人ではフリーのライターとしても活動

「金の卵シリーズを手がける代官山ブックスは、“僕が読者として読みたいものを電子書籍で作る”ことを目的に、2013年に立ち上げた一人出版社です。

元々僕は、出版業界で働く作家の椎名誠さんや高橋歩さんに憧れていて、前職では教科書出版を行う小さな出版社に就職していました。そこは5名ほどの会社だったので、編集者と言えど、書店営業や倉庫整理なども行い、土日出勤も当たり前という状況。紙の本を作るためにはやるべきことが多すぎてお金もかかると痛感しました」(廣田氏、以下同)

そんな矢先、電子書籍に出会い、書籍出版の概念が変わったという。

「当時流行していた『もしドラ』(もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら)をiPhoneで読んでみたところ、あまりにスラスラと読めてその便利さに感動したんです。そしてこれだったら今やっている倉庫整理などの仕事を省いて、本づくりだけに集中して作りたい本が作れる! と確信し、独立して電子書籍をメインとした出版社を立ち上げたんです」