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目標は、3000万円

リリー・フランキーさんが3月18日、北九州市立文学館の「子どもノンフィクション文学賞」の選考で、小倉にやってきます。

そのタイミングで、小倉昭和館のクラウドファンディングを立ち上げました。

旦過市場の一度目の火事から、4月で1年。3月17日には、うちのドキュメント番組が、NHKで放送されています。時が過ぎていくのはおそろしい。まだ工事も始まっていません。12月の再建まで、あっという間なのでしょう。

リリーさんと直樹(息子さん)と3人で、18日に記者会見をひらきました。クラウドファンディングは、3月20日の19時から、4月30日の23時59分まで。目標金額は3000万円。

応援団長のリリーさんのメッセージを紹介します。

「度重なる火災で焼失したものは、生活や、想い出、そして、未来でした。自宅にいても手軽に映画と接触できる今。でも、映画と僕たちの関係は、知識だけでは成り立ちません。映画を求めて、時間やお小遣いを切り詰めて、そこに赴いた経験。その経験こそが、僕たちの感受性を培ってきくれました。

今回、焼失した小倉昭和館を皆様にお伝えしたのは、観客の少ない家族経営の3番館を再度作る為ではありません。町の映画館という場所が、改めて、子供たち、大人たちの語らいの居場所でありますよう。そこに行けば、年齢、性別、人種に関係なく、食事をしながら、今観た映画、いつかの人生をささやき合えますよう。映画、映画館を媒介に、すべての人が集える、とまり木になれれば。それは、懐古的な想いではなく、文化という、人々の未来の為に」


リリーさんは東京に住んでいますが、東京がふるさとだと思ったことはないそうです。いつかきっと、小倉に帰ってきてくれます。

リリー・フランキー「懐古的な想いではなく、文化という、人々の未来の為に」家族経営の老舗映画館「昭和館」が火災を乗り越え復活する日_1
九州と本州を結ぶ関門海峡 手前が山口県下関市、奥が福岡県北九州市
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新しい小倉昭和館は、みんなの居場所であってほしい。映画人や作家が15人、応援メッセージをくださいました。

奈良岡朋子、光石研、岩松了、片桐はいり、平山秀幸、タナダユキ、松居大悟、村田喜代子、吉本実憂、小田彩加(HKT48)、藤吉久美子、田中慎弥、福澤徹三、秋吉久美子、草刈正雄。

みなさまのおかげで、ちょっとずつ、復活の夢を描けるようになっています。

昭和館PRESENTSのイベントも続けています。

映画『エゴイスト』は、印象的な作品でした。

鈴木亮平が主演で、ファッション雑誌の編集者。美しいパーソナルトレーナーの宮沢氷魚と、男同士の恋に落ちるのですが、若い恋人に振り回されて深みにはまります。

物語が進んで、宮沢氷魚の母親として、阿川佐和子が出てきます。この阿川さんの自然な演技が素晴らしい。鈴木亮平との息のつまるような疑似親子の関係性に、激しく胸を揺さぶられました。

うちでも上映したかったのですが、鈴木亮平の友人役で出演したドリアン・ロロブリジーダさんが、『エゴイスト』のトーク&再建応援イベントのために、小倉にやってきてくれました!

3月21日、舞台はタンガテーブル。旦過地区にある紫川近くの宿泊施設&レストランで、定員60人の観客は満員御礼。

ドラァグクイーンのドリアンさんの歌謡ショウで、おひねりも集めて寄付してくれました。シネクラブサポート会の藤野さんたちも盛り上がって、手作りのうちわを準備しています。

たくさん笑いました。みんなと酔っぱらって、最高の気分だったのですが、ひとつだけ心残りがあります。

このときは映画『エゴイスト』を上映できませんでした。

いつも春には、アカデミー賞の授賞式があります。今年も『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』『ザ・ホエール』『生きるLIVING』『TAR/ター』『ウーマン・トーキング私たちの選択』『RRR』など、良質な映画がどんどん封切られています。

日本でも『ある男』や『ケイコ目を澄ませて』などが賞をとったり、『THE FIRST SLAM DUNK』や『BLUE GIANT』が海外でも話題になったり、どんどんアップデートされていく世の中についていくのも大変です。

映画を見る時間がない。それがつらい。