「こんなひどい世界、終わっちゃえ」紀里谷和明インタビュー#1はこちら

世界はすごく広大な100円ショップになった

「『CASSHERN』の脚本は稚拙だったし、完璧ではなかったけれど…」紀里谷和明監督が振り返る、不当にジャッジされ続けてきた20年_1
紀里谷和明監督。新作は4月7日公開の映画『世界の終わりから』
🄫Kiriya Pictures
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──監督は映画業界に対して危機感を抱いているとのことですが、劇場でかかる映画だけでなく、今は膨大な映像作品が世の中にあふれています。

作品がコンテンツという名前に取って代わられたあたりから、ものすごく変な流れになっていっちゃいましたよね。誰かが10年かけて作った映画も、誰かが寿司屋で醤油さしを舐めている映像も、同じ棚に並べられているわけです。それもただ同然の金額で。

そして再生回数が上がれば、そちらに価値があると見なされる。今は世界がものすごく広大な100円ショップのようになってしまったと思います。

──あまりに商品数が多すぎて、どれを手にとっていいかも悩みます。

全部を手にとっている時間すらないですからね。もちろん、誰かがものすごく苦労をして作り上げた商品が100円ショップの棚に並んでいるのと同じように、作り手の思いがものすごく込められている作品もある。
でも簡単に手に入るから、気に入らなければすぐに試聴をやめるし、忘れてしまうでしょう? 

──タイパやコスパを求める時代でもありますからね。

つまり機械的な発想ですよね。例えばSNSでもそう。「この人と写真を一緒に撮ったらフォロワーが何人増えるかな」とか、損得勘定ですべて動いてしまっている。それって、めちゃくちゃアルゴリズム的な発想ですよね。

作品を作る側も、売れるため、ヒットするために動画は10分以内に収めなきゃダメとか、開始から◯分あたりで笑えるようにしなきゃダメとか、データに縛られてしまっている。クリエイティブでもなんでもないですよね。それなのに、この10年くらいはクリエイターと呼ばれる人が量産されたわけです。

僕はAIに関してもものすごく研究しているのですが、今はAIが作り出す作品の方が圧倒的にクリエイティブだと思います。AIは売れようとも、認められようとも思っていない。人間が自由を放棄した今、AIは自由な発想でものすごいものを作り出している。もう、人間は負けるに決まってます。