「普通」なら帰って当然

弱肉強食のハリウッドで、誰も悪口を言う人がいないほど“いい人”として有名なのが、トム・ハンクス。彼がいかに人間的にすばらしい人なのか、私も実際に目撃しています。

監督と脚本を務めた『すべてをあなたに』(1996)のプロモーションで来日したときに、出演した若い俳優たちも連れてきていたんです。あるテレビ番組に招かれたんだけど、1時間半くらい待たされることになっちゃって。

彼ほどの大スターなら怒って帰るのが「普通」ですが、彼は若い俳優たちがイライラしないように、自分の昔話なんかをして率先してみんなを楽しませているの。

何て偉い人なのか、とはたで見ていても感動しました。誰もが好きになってしまう温かい人柄の大スターなのです。

これまで本当にたくさんの映画に出演してきているけれど、私が一番好きなのはメグ・ライアンと共演した『めぐり逢えたら』(1993)。

実は“ラブコメ”って、映画としても演じる俳優としても、一番難しいジャンルだと思うの。コメディとして笑わせながらも、ロマンティックでなければならないでしょ。両方を満足させる細い線をたどるのは至難の業です。

その後に作られた『ユー・ガット・メール』(1998)は、その点、ちょっとハズれてたかな(笑)。『めぐり逢えたら』は、トムとメグの相性がすごくよかったし、数あるラブコメの中でも、一番心を温かくしてくれるラブコメです。