まずは中学受験、で良いのだろうか… 

私自身は父親が運営していた学習塾で学び、中学受験をして神奈川県にある私立の中高一貫校に進学。その後、首都圏の大学を卒業しましたが、自分が父親の後を継いで指導する側に立った時に、自身の学びのキャリアを振り返り、「本当にこれで良かったのか」「皆がこのパターンでいいのだろうか」というような違和感や疑問を持ちました。

特に小学校4年生ぐらいからスタートする中学受験は、目的と手法が逆になりがちです。

「将来になりたいものがあるから手法のひとつとして私立中学校へ進学をする。そのために塾を選ぶ」というのが本筋だと思うのですが、昨今は「とにかく良い私立中学校へまず行こう。大人になって何をしたいかは、その後ゆっくり考えればいい」というような風潮がある。そこに非常に課題意識を覚えました。

今の時代、終身雇用が主流ではないですし、入社した当時からセカンドキャリアを考えるような社会になってきています。皆でお手々つないで新卒一括採用のフォーマットに乗るというような時代でもありません。

だとすると、やはり将来の設計図から逆算して、学びのキャリアはあるべきなのかと思います。まずは親世代の価値観から脱却しないと大変なことになるなということを強く感じています。 

なりたい職業がない日本の子どもたち 

このような社会に移行していく中で、まず大切にしなければと思ったのが、「何で勉強するの?」という子どもたちからの質問です。

親や先生であれば、一度や二度はこの質問を投げかけられた経験があるのではないでしょうか。ちょっと考えてから「知らないことを知るって素晴らしいことじゃないか」とか、「将来の自分のためだよ」とか、「とにかく頑張れ!」と答えたかたもいるかもしれません。

ただこうした日本人の答えかたには問題があると思わざるを得ません。学校外で勉強している時間が、世界平均1.8時間に対し、日本の子どもたちは世界最低レベルの1.1時間。世界の6割程度しかないことが、そのことを示しています。

この原因を、我々はキャリア教育の不足にあると考えました。というのも「なりたい職業がない子たちの割合」が日本は突出して高く、約3人に1人が夢を持っていないというのは、世界平均の5倍の水準だからです。

日本人は謙虚で夢を堂々と語ったりしないという文化があるとはいえ、やはりちょっと異常値だと思います。夢がないと学ぶ意欲も湧きませんし、学ぶ意欲が湧いていないのに受験だけは激化していく。結果、子どもたちはやらされて勉強するという形になってしまって疲弊している状況です。

ユニセフが出している精神的幸福度のデータによると、日本は38カ国中37位です。また内閣府は「日本の若者たちの自己肯定感が世界最低水準にある」ということを、2019年に認めてしまっています。教育の問題を非常に多く抱えているのが、今の日本なのです。