9割の暴力団は生活困窮者

警察庁の統計によれば、全国の暴力団勢力は約2万4100人とされている。

山口組の分裂劇をはじめ、メディアによって脚光を浴びるのは、組長などのごく一握りのトップの姿だけだ。たしかに、最高幹部たちは高級スーツに身を包み、外車を乗り回し、多数の配下を侍らしている。彼らの生き方は、末端の組員から吸い上げた金を惜しげもなく使い、自らの力を必要以上に誇示すること。それに惑わされ、ひきつけられる若者もいる。

しかし、実態は違う。9割以上の暴力団構成員の生活は、最高幹部のそれとは大きくかけ離れたものなのだ。彼らは、暴力団対策法や暴力団排除条例によってがんじがらめにされ、しのぎを奪われ、生活困窮を余儀なくされている。

このこと自体は自業自得といって差し障りはないだろう。だが、問題は、苦境に陥った暴力団構成員のもとで生まれ育つ子供たちだ。彼らは親の暴力と困窮と差別という三重苦を生まれながらにして背負うことになる。

私はルポ『ヤクザ・チルドレン』で、多数の暴力団構成員の子供たちの人生に光を当てた。その驚くべき実態の一部を紹介したい。