「成人式を人生の目標に生きてきた10代の気持ちに応えたい」北九州・ド派手成人式を支える貸衣装屋「みやび」の店主、池田雅の女意気_2
2017年の大作「鳳凰シリーズ」。社内でプロジェクトチームが立ち上げ、制作に丸一年間費やした。年に1〜2本、物凄いオーダーに応える形で超大作を仕上げるという

やれることは全部やってあげたい

――そうやって、ファーが付いたり、レインボーカラーが出現したり、名前の入ったオリジナルの幟(のぼり)や扇子は当たり前。最近では、スパンコールやスワロフスキー付きの羽織袴まで登場しています。

信じてもらえないかもしれませんが(笑)、私自身は派手なものよりシンプルで品よく、すっとしたものが好みで。女の子が花魁の格好をしたいと言い出した時も、「ちょっと待って。よく考えてから決めようね」と一度は止めるんですけど、最後は本人の気持ちですから。

一生に一度の晴れ舞台で、着たいものを着て本人が喜んでくれるのが何よりも一番大事なことなので、私たちはそのお手伝いができるだけでいいと。

――とはいえ、中にはさすがにそれは…というリクエストもありますよね?

ありますね(苦笑)。

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ド派手な幟。生地もかなりいい物を使っている。

――例えばどんなものでしょう?

「肩を尖らせたいんやけど」とか、「ここに薔薇の刺繍が入ったらかっこいいよね」とか、「羽根を背負いたいんやけど」とかですね。でもうちのスタッフは本当に優秀なので、技術的には可能ですし、できる限り叶えてきました。
他なら間違いなく断るはずなんですけど…。それに、新成人たちは最初から「できますか?」じゃなく、「できるよね?」という感じでやって来るので。

――出来ないとは言えない?

言えないです。というか言いたくないんです。私の性格もあるし彼らと話をしていると、一生に一度の成人式にかける思いというのが、もうビシバシ伝わって来るので出来ないとは言えないんです。それなのに全員が全員、「安くしてね」って言ってきますしね(苦笑)。

――失礼ですが、それでお店は大丈夫なんですか?

フルオーダーや、大掛かりにカスタマイズするものに関しては、その年だけでみると赤字です。でも一年のトータルや3〜5年先までのトータルで考えると、黒字です。もっとも作業時間やその大変さは抜きにしてですが(笑)。

――そこまでしてやる原動力はどこから来ているんでしょう?

ウチに来る子たちは、成人前から働いている子が多いんですよ。成人式を目標に生きているって言ったら、そんな大袈裟な……と思う人がいるかもしれませんが、彼らは10代の後半くらいから、本気で成人式に出ることを目標に頑張っているんです。

その子たちの思いを全部受け止めて、できることは叶えてあげたい――。
大変ですよ。中には振り回す子もいますから。でもそれでも、私たちが頑張ってできることならしてあげたい。夢を叶えてあげたい。その思いだけですね。

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令和5年度の超大作 スパンコールは全て手作業。
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900万円損失が出た年も、裁判は苦渋の決断だった。北九州のド派手成人式、20年間を振り返って はこちらから

取材・文/工藤晋