上が下を支える職場
――昨年から今年にかけて放送された『ここにタイトルを入力』は、当時入社2年目の原田和実さんが企画・演出ということで話題になりましたね。
原田はコロナ禍の入社で、入社式もなかったし、ずっとリモートワークだったんです。で、彼がどうしたかというと、とにかく企画を考えたんです。彼が私に持ってきた企画書を見ると、率直に言って、私たちが作ってきたいわゆる“王道”をぶっ壊してきたな……と。でも、ちゃんと今のテレビの面白さをリスペクトしているので、すぐに番組にすべきだと思いました。
だけど、なにしろ入社1年目だから、企画書は書けても現場のハウツーはわからないわけですよ。だったら、ハウツーがわかっているベテランスタッフを付けてやらせてみよう、と。
――北口さんの英断?
いえ、うちの会社がそうなんです。「おもしろい! やってみよう!」という人ばっかり(笑)。でも、みんながそう思えたのは、原田の企画書の斬新さに加え、彼の熱意が尋常じゃなかったからです。
番組に出てくれたバカリズムさんのことを、原田がどれほど好きだったか。小峠(英二)さんを、シソンヌさんの芸をどれほど愛していたか。勉強していたか。その思いが、フジテレビとタレントさんたちを動かしたから、実現した番組なんです。
――これから入社してくる人のなかにも、第二の原田さんがいるかもしれませんね。
おもしろいものを作りたいという気持ちがある人には、ぜひ来て欲しいですね。
フジテレビのいいところは、自分たちが蓄えてきたことを惜しみなく後輩に教えるところだと思っています。
おもしろい企画を思いついたけれど、どういうふうに具体化すればいいのかわからなかったら、教える。現場で、違うアングルから撮ったほうが画が生きると思ったら、教える。
やる気とアイデアさえあったら、あとは上がなんとかしますから(笑)!
――そういう意味では、北口さんの存在も女性にとっては大きいと思います。女性が演芸番組のチーフプロデューサーというのは珍しいですよね?
忘れもしない4年前、海外ロケに行っているときに、部長から「正式に人事異動で北口に演芸班のチーフプロデューサーを任せる」と電話がかかってきたんです。
すごく嬉しくて「必死で頑張ってきたことを見ていてくださったんだな」と思いつつも、「私で大丈夫かな、演者さんは不安じゃないかな」と心配しながら各事務所にご挨拶に伺うことに。
そうしたら、タイタンの太田光代社長や、ワタナベエンターテインメントの渡辺ミキ社長が「フジテレビは、女性が演芸班のチーフをやるの!? 素晴らしいわ!!」と、とても喜んでくださって……。応援してくださる方々のためにも頑張らなくちゃと、身が引き締まる思いでしたね。