秘密兵器はBBQとハーブティー

アサドとマテ茶で心を一つに。衰えたメッシがむしろプラスに働いた、アルゼンチン代表、カタールW杯での大躍進の6つの理由_2
左から、ロドリゴ・デ・パウル、リオネル・メッシ、フリアン・アルバレス、ナウエル・モリーナ(写真:Agencia EFE/アフロ)
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4. 「衰えたメッシ」がむしろプラスに

ここ10年のアルゼンチン代表は、メッシに頼りっきりだった。メッシ以外の10人で耐えて、メッシの一発に賭けるという、カウンター主体のスタイル。今大会でもその構図は大きくは変わっていないが、唯一変わったのは、メッシも歳を取ったということ。35歳の今、全盛期に比べて明らかにスピードは落ち、守備での貢献も極端に減っている。

ただ、チームメイトたちも「全てをメッシに任せられない」ことをしっかりと理解している。だからこそ、メッシが関与せずともゴールを狙える場面では、メッシを意識しすぎることなく、攻撃を完結させる。前線の守備でも、フリアン・アルバレスを中心に、エネルギッシュな若手選手がメッシの分まで走り切る。最終ラインでは、メッシと苦楽を共にしてきた34歳のベテラン、ニコラス・オタメンディを中心に、激しい対人プレーで守り切る。

こうしたゲーム展開の中では、メッシの登場はそこまで頻繁ではない。最後の局面で顔を出し、決定的な仕事をする。これまで揶揄されてきた“FCメッシ”というスタイルではなく、粘り強いアルゼンチン代表に、プラスアルファでスーパーなメッシという、まるで“サプライズ出演メッシ”とでも呼べるようなスタイルなのだ。

練りに練られたスカローニ監督の戦術と、メッシに対する他の選手の健全なリスペクトが、この新しいスタイルを可能にしている。そう考えれば、メッシの全盛期を過ぎた今だからこそ、決勝に進んだ2014年の当時よりも完成度の高いチームを作ることができた、とも言えるだろう。

5. バーベキューとマテ茶で心を一つに

カタールで開催された今大会、多くの代表チームは環境面が整っている5つ星ホテルに滞在した。ただ、アルゼンチン代表は そうした高級ホテルではなく、カタール大学の学生会館で大会を過ごすことに決めた。

その理由は、広々とした大学の敷地内で、アルゼンチンの伝統的なバーベキュー “アサド”が開催できるため。牛肉は母国から空輸され、アサド専用のシェフを常駐させるという徹底ぶりだ。

また、約500kg分もの“マテ茶”をカタールに持ち込んでいたことも判明。マテ茶は南米で愛されるお茶で、ブラジル代表も約12kg分を持ち込んだそうだが、その差は歴然。試合前や試合後のロッカールームやチームのバスで、アルゼンチン代表のほぼ全員が愛飲しているそう。ポーランド戦で得点を決めたアレクシス・マック・アリスターは、「ぼくらが一つになるために、他の何よりも(マテを)飲んでいる」とタイムズ紙(英国の新聞)に語っている。

アサドで一体感を高めて、マテ茶で一つになる。異国の地で戦うW杯という舞台において、母国の雰囲気を再現することは、一笑に付せない大切な要素なのだろう。サッカー面だけでなく、日常面でのこうした工夫が、今大会での悲願達成を可能にしたのではないだろうか。


取材・文/佐藤麻水