良き理解者たちと、メッシの苦労を知る若手たち

アサドとマテ茶で心を一つに。衰えたメッシがむしろプラスに働いた、アルゼンチン代表、カタールW杯での大躍進の6つの理由_1
左から、パブロ・アイマール、リオネル・スカローニ、ワルテル・サムエル(写真:ロイター/アフロ)
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2. チームを支えるレジェンドオールスター

戦術的な手腕もさることながら、元アルゼンチン代表の名手たちを代表チームのコーチとして抜擢したことも、スカローニ監督の功績の一つだ。

ベンチで監督の隣に常に座っているのは、メッシの憧れの存在だったパブロ・アイマール。彼の引退の際にはメッシも「1人の偉大な選手であり、僕のアイドルの1人が現役を引退する」と、自身のフェイスブックに綴っている。

また”The Wall”とも称えられていた守備の名手ワルテル・サムエルは、守備の極意を今の選手たちに授け、ロベルト・アジャラは現役時代と同様に、チームの一員としての正しい振る舞い方を説いているという。

ベンチに座る往年のスターたちが、スカローニ監督と選手たちに絶大な安心感をもたらした。まさに“オール・アルゼンチン”と呼べるグループとしての結束力が、今大会での優勝を可能にしたのだ。

3. メッシを見て育ってきた選手たち

アルゼンチン代表の顔ぶれには、20代前半の若手選手がズラリと並んでいる。昨年のコパ以降、ディフェンスラインに抜群の安定感をもたらしたクリスティアン・ロメロは98年生まれの24歳。今大会の活躍でステップアップも噂される中盤の要、エンソ・フェルナンデスや、準決勝でヒーローになったフリアン・アルバレスに至っては、まだ22歳の若者だ。

メッシが初めてW杯に参加したのは、2006年のドイツW杯。当時19歳だったメッシは、アルゼンチン代表として最年少出場、最年少アシスト、最年少得点を記録する活躍を見せた。当然、前述した若手選手たちは、幼い頃からメッシのスーパープレイを目に焼き付け、憧れてきたはずだ。

それだけでなく、メッシ擁するアルゼンチン代表が、順風満帆とはいえない時間を過ごしてきたことも、今の若い選手たちは理解している。母国の英雄ディエゴ・マラドーナと常に比較され、「14歳でスペインに渡ったメッシは、アルゼンチンに思い入れがないんだ」などという、謂れのない誹謗中傷がメッシに投げかけられてきた。

その背景を全て理解した上で、アルゼンチン代表の一員として、あの“リオネル・メッシ”と一緒に、おそらく彼の最後となるW杯のピッチに立っている。この状況に奮起しない選手などいないだろう。「英雄メッシに相応しい結果を」。その気持ちが、アルゼンチン代表を一つにしたのだ。