初めて体験する、マジなスポーツカーの圧倒的な走り
英国流ミニマリズムに基づく、ライトウェイトスポーツカーを主力とするロータス。
以前からとても気になっていた、憧れの車メーカーだ。
ただしロータスの車はどれも、ストイックな純・スポーツカーであることを知っていたので、自分とはなかなかご縁がないのだろうとも思っていた。
それが、こんなに気安く乗れるなんて。
実にいい時代になったもんだ。
アプリで見つけたロータス・エキシージの保有者は、西武池袋線小手指駅近くのカーディーラー、ロータス所沢だった。
まったくもって個人的な話で恐縮だが、お店の場所は僕の出身大学のキャンパスのすぐ近く。
土地勘があったし、訪れるのが楽しみでもあった。
思えばその大学は、車通学が許されていた。
だから僕はかれこれ30年以上前の学生時代、毎日毎日、自宅から40分ほどドライブして大学に通っていた。
車を運転するのが大好きになったのは、その頃からだったのだ。
ご対面したロータス・エキシージSは、非常に車高が低く、コンパクトながらグラマラスなボディを持つ車で、いかにも速そうなルックスだった。
リアに積まれた総排気量3456ccのV6エンジンは、最高出力350ps(馬力)とやる気満々。
僕が普段乗っている2016年式のスバルXVに搭載されている水平対向4気筒エンジンは、2000ccの150psだから、エキシージはそれにプラスすること馬200頭分のパワーを持っているのだ。
たてがみをなびかせながら草原を疾走する200頭の馬軍団を頭に思い浮かべ、少し背筋がゾッとしてしまった。
スポーツカーにはほとんど乗ったことがない旨を、正直に店の人へ伝えると、乗り方のコツなどを簡単にレクチャーしてくれた。
ただ今回のエキシージはオートマティック仕様なので、それほど心配することもないのだろう。
店の人と一緒に外回りのチェックをした。
車はまったくの無傷で、ピカピカだったので緊張感はより高まったが、保険にバッチリ入っているので大丈夫だ。
アプリ上で各種項目にOKのチェックを入れたら、いよいよ運転席に乗り込む。
ドアを開けてもらったので、スマートに乗り込もうと思ったのだが、ここで一苦労。
とにかく走りを優先してあらゆるところを絞り込むように設計されているエキシージは、開口部が狭く、そうやすやすとは中に入れないのだ。
まず左足を差し込みお尻をねじ込んでから、残った上半身と右足をどうしたものかと考え、あちらに曲げこちらに曲げして四苦八苦。
カバン芸を披露するエスパー伊東になったような気分でようやくバケットシートに落ち着くと、キーを回してエンジンをかけた。
ブオン!と痺れるようなエンジン音が鳴り響く。
これですよこれ!
ウッヒョー、かっこいいと目を輝かせるおっさんを、ロータス所沢の方は温かい目で見守ってくれていた。
ああ、なんだかちょっと恥ずかしい。
ロータス所沢を出ると、10分ほど走った先にある我が母校のキャンパス方面へ向かった。
まずどこかの駐車場に停めて一旦落ち着き、車の機能を確認したり、写真を撮ったりしたかったのだ。
でもその10分ほどの走行ですでに、この車のヤバさは十分に伝わってきた。
加速感がすごい! エンジン音でか! ハンドル重! サスがカチカチ!
そうかー、これが本物のスポーツカーなのね、と味わいながら走っていたら、気分が次第に高揚していくのだった。