「自分たちはスペイン国籍だが、スペイン人ではない」

カタールW杯、かつての世界王者であるスペイン代表はグループリーグ最終戦で日本代表と相まみえる。

スペインという国は、”遺恨で絡み合う複合民族国家”である。様々な王国、民族をひとつにした形だが、例えばバルセロナを県都にしたカタルーニャ州が今なお独立を求めるなど、一筋縄ではいかない。そもそも”分断ありき”で成り立っているのだ。

「自分たちはスペイン国籍だが、スペイン人ではない」

そう言い張る人は、中央以外ではむしろ多数派だ。

表面をなぞるスペイン観光では、フラメンコ、闘牛が「これぞスペイン」に映るだろう。しかし、それは外国人が受け取るステレオタイプな「スペイン」に過ぎず、実態は一部地域の伝統芸能でしかない。

国の中に国が蠢き、混ざり合いそうで混ざり合わず、お互いは反発し合うのだが、その混沌に身を浸すと、本当にここはスペインなのかと、なんとも不思議な心地になるのだ。

各地域の特色は、”国技”であるサッカーと食事の両方に顕著に出る。そこでW杯の対戦を機に、特異な国の深層を掘り下げたい。娯楽度の高いサッカーと魅力的な料理の数々をやや強引に結び付け、スペインを”食らう”――。
 
スペイン代表選手で、華やかさを際立たせているのはカタルーニャ人と言えるだろう。

セルヒオ・ブスケツ、ジョルディ・アルバ、エリク・ガルシア、ダニ・オルモは超攻撃的サッカーの伝統を持つFCバルセロナで現在もプレー、もしくは下部組織で薫陶を受けて育っている。彼らはテクニカルなサッカーを革新的に高めた。また、民族分布は諸説あるが、バレンシア地方まで含めると、バレンシア州出身のフェラン・トーレス、パウ・トーレスなども含まれるか。

カタルーニャ人は代表の根幹を担うほどで、クリスマスには毎年、FIFA非公式のカタルーニャ代表を組み、各国を招いて試合を行っている。その勝率は高く、W杯ベスト8も狙える陣容である。

もしカタルーニャ人である名将ジョゼップ・グアルディオラが率いたら、W杯優勝も夢物語ではない。技術が高い選手が多く、ひらめきを感じさせ、美しいほどの強さが特徴だ。

そのカタルーニャで一番のおすすめの料理は、フィデウアである。スペインで最もメジャーな料理はバレンシア発祥の米料理パエージャだが、フィデウアは、米の代わりにパスタを使ったパエージャと言える。

フィデウア、チュレトン、コシード。スペイン代表選手たちを支える地域料理_1
パエージャ
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カタルーニャで定番のアリオリソース(ニンニク入りマヨネーズ)を適量つけ、鍋をがりがりしながらおこげと一緒に食べると、まさに至福。
工夫を凝らした風味は優雅で、種類も鶏肉、魚介、イカスミと千変万化で楽しめる。