なぜ年収800万円で幸福度は変わらなくなるのか?

これも同じ大学の調査で、金融資産の場合、1億円を超えると幸福度は変わらなくなるという。これはおそらく、いまの日本では1億円が「安心」の基準になっているからだろう。日本国の借金は1000兆円を超えて、「このままだと国家破産する」とか「日本円は紙くずになる」と警告するひとがいる。それでみんな不安になっているのだけど、手元に1億円のお金があれば、それを外貨に換えたりして、「国家破産や年金破綻でもなんとか生きていける」と安心できる。

金融資産がいったん平衡状態に達すると、あとはお金を増やすより減らさないことを考えるようになる。なぜなら、これ以上お金が増えても幸福度は高まらないが、お金が減るとものすごく不安になるから。これが、お年寄りが銀行預金やタンス預金をする理由だ。

それでは、年収800万円で効用(幸福度)が変わらなくなるのはなぜだろうか。

その理由は、独身でそれだけの収入があると、東京タワーの見える高層マンションに住む、ブランドもののバッグを買う、スポーツカーを乗り回す、海外旅行をする……など、友だちが「いいね!」といってくれることがひととおりできるからだろう。

夫婦とも高収入のパワーカップルでは、年に1500万円の世帯収入があれば、子どもを私立学校に入れ、好きな習い事をさせ、週1回の外食や年1~2回の家族旅行もできる。このとき、夫婦の食事を近所の洒落たビストロからミシュラン星つきのレストランに変えたり、家族旅行を国内のキャンプ場からハワイの高級リゾートにしても、幸福度にさほどの変化はないのだろう。

働いていれば休みが自由に取れるわけではなく、それ以上の収入があっても、使いきれなくて銀行口座に貯まっていくだけだ。
こうして一定の収入を超えると、幸福度は平衡状態になる。