それでも子供の顔出しをして発信する理由

性的少数者や選択的シングルマザーはAIDの門前払いとなり、子供のアイデンティティに関わる出自を知る権利は子供側の視点には立っていない。ならば長村さん&茂田さんのように、子供の出自を知る権利などに協力するドナーを自分たちで探したほうが、生まれてくる子供に対しても誠実に思える。

子供を授かったレズビアンカップルが葛藤しながらも子供の顔出しをする理由_04

「もし子供が自分の出自について興味が出てきたときに、私たちが何をしてあげられるのかを考えました。ドナーになった人が提供してくれた理由を直接話せるように許可をもらっていますし、会うこともできます」

現在、メディアから取材の依頼があった際やYouTube「ママンズチャンネル」など自分たちから発信するときは一家3人、顔出しをして発信している。しかし、そこには葛藤があるという。

「本当は子供の顔を出したくないんです。なぜなら生まれてきてくれて、やはりこの子を守りたいと思ったから。ケチをつける人間はどうしてもいますし。葛藤です。子供が少しでも嫌がる様子を見せたらやめようと思っています」

葛藤の末に子供の顔を出して発信することを決めたのにはもちろん理由がある。

「今は法的に私たちは家族としてみなされていません。それは生まれてきた子供の人生にも今後大きく関わることです。普通以外は悪いことのように言われる日本で、もっといろいろな家族が可視化されることによって、我が子が特別視されず、いろいろな人にとっても生きやすい社会になってほしい。こうして顔を出しているのは、次の世代に繋げるためにもやっていくべきことだと思っているからです」

#2「どっちがパパで、どっちがママやってるの?」と言われて唖然とした…へつづく

取材・文/中塩智恵子