インドシナ難民2世の不良グループ
親世代の難民は家族のために必死に働いたが、その子供たちは疎外感を膨らませることが多かった。彼らは学校や地域で日本人から激しい差別に遭い、親には相談に乗ってもらえず、大人になってからも条件のいい職業に就くことが難しかった。そうして1人また1人と道を外れる者たちが出てきたのである。
こうして現れたのが、インドシナ難民2世の不良グループだった。彼らは主に東京や神奈川や大阪といった大都市に根を張り、そこに生きる同じ東南アジアの人々を相手にビジネスをはじめた。
外国人パブからみかじめ料を取る、盗品を安く転売する、不法滞在者に仕事を斡旋する、売春業を営む、ドラッグを密売する……。日本にいる東南アジアの人たち向けに、暴力団のしのぎのようなことをしはじめたのだ。
不良グループに属するベトナム人男性は次のように語っている。
「大きな都市や繁華街には、そこを仕切っているベトナム人のグループがあるよ。外国人は日本人の警察やヤクザより、同じ外国人の方を信用する。だから、取引にしても、トラブル解決にしても、俺たちを頼るんだ」
外国人が増えれば増えるほど、需要が膨らむという相関性があるのだろう。一方で、日本には別の経緯で来日したベトナム人がいる。主に1990年代以降に出稼ぎを目的としてやってきた人たちだ。現在、技能実習制度を使ってきている人たちも含まれるが、主に北ベトナムの貧しい家の出身者だ。彼らは母国で背負った借金の返済のため、数年間日本で働いて貯金をして帰国することを目指している。
だが、すべての人たちが予定通りに貯金をして帰国できるわけではない。技能実習制度の受け入れ先でのトラブルから失踪したり、ビザが切れた後も不法滞在したり、日本に残ることを選ぶ者たちがいるのだ。また、金のために犯罪に手を染めざるを得ない者もいる。