アメリカ人をやっつける強い日本人を見たい
プロレスは、テレビのゴールデンタイムから大きく遠ざかり今ではテレビ朝日の「ワールドプロレスリング」が土曜深夜に30分枠で放送されるだけになった。2023年に本放送から70年を迎えるテレビジョン。60年のキャリアを誇る元日本テレビエグゼクティブアナウンサー・徳光和夫氏はテレビにおけるプロレスの価値をどう受け止めているのか。私の質問に徳光は即答した。
「テレビはプロレスですよ。プロレスがなかったらテレビはこんなに早く一般家庭に普及しなかったと思います。僕がプロレス中継をやっていて、一番印象に残っている光景は、地方での中継で足の不自由な方がリヤカーに乗って会場に来た姿です。一目でもいいからアメリカ人をやっつける強い日本人を見たい――そんな勇気を日本国中にテレビは届けていたわけです。敗戦で打ちひしがれたこの国の人へ勇気を与えていたんです。
そういう意味で1954年にプロレスと出会ったことがテレビ界全体にとっていかに大きかったか。そこから清水さんや原さんがプロレスはまさに最高のスペクタクルかつスペクテイタースポーツだと承知して、視聴者に喜んでもらおうとより面白くしなくてはいけないと中継に実況に創意工夫したんです。これぞまさにテレビです。テレビはプロレスから始まったんです」