弔意を希望した市民はわずか3人
この市長発言を不審に感じた市民が「記帳所設置の件で市民から寄せられた意見・要望」「その意見・要望に対して市がどのように協議・意思決定・対処したのか」について開示請求した結果、該当する意見・要望はたった3件(人口約377万人の0.0000007%相当)だった上、「市民からの意見・要望に対して協議・意思決定・対処していないため行政文書は作成していない」という驚きの回答が返ってきた。
もし実際に横浜市が市民からの意見・要望をもとに意思決定したのであれば、その行政文書を作成しないことはあり得ない。つまり、山中市長が記帳所設置の根拠として述べた「市民の皆様から弔意を希望する声もありました」は真っ赤な嘘である。
そもそも、どうしても市民からの弔意を受け付ける場を設けるのであれば、自民党 神奈川県連(横浜市役所から徒歩圏内に事務所ビルあり)が対応すれば済んだ話である。自治体である横浜市が税金をかけてまで対応する必要は全く無い。
さらに、本記事を執筆するにあたって、記帳の届け先の最新の調整状況を確認したところ、今現在も「届け先は未定」(横浜市 総務局 総務課 9月12日 回答)と判明した。つまり、記帳開始から約2ヶ月が経過したにもかかわらず、いまだに「一時的な保管」と言い張る異常事態が続いているのだ。
冒頭にも紹介した通り、横浜市は個人情報保護条例を逸脱した超法規的対応をとらない限り、3700人分の記帳を永遠に「一時的」と言い張って保管するか、市民が忘れた頃に廃棄するしかない。
役所に記帳所を設置した自治体は他にもあるが、記者会見や開示請求結果から判断して、横浜市の杜撰さは群を抜いている。事実、横浜市では本件に限らず、口頭決裁の横行による意思決定の不透明化、杜撰な文書管理、不祥事の組織的隠蔽などがここ半年だけでも続発している。
・開示請求1件に対して、通常はまとめて連絡するところをわざわざ担当部門ごとに分けて126通の決定通知書を送付。126通の一覧作成すらも市は拒み、開示請求を実質的に妨害(詳細は三宅勝久記者ブログ参照)
・小学校教師による児童いじめを第三者委員会と教育委員会が組織的に矮小化(詳細は筆者ニュースレター参照)
・いったん公表した公文書を不可解な理由・プロセスで取り消し(詳細は井上さくら市議ブログ 参照)
横浜市の人口は約377万人で、全国の市町村としては2位以下に大差をつけてトップだ。規模が巨大過ぎることを背景に横浜市役所では長年にわたって行政手続きの軽視・腐敗が進行していたことに加え、昨夏に市政に徹底的に無関心な市長が就任したことで職員の職権濫用が容易になってしまった。
横浜市は日本最大の政令指定都市のため、「大都市だから、しっかりしているはず」との印象を持つ人も多いだろう。だが「そうした先入観を隠れ蓑に、法令や倫理観を逸脱した行為が横行している」のが実態と言うほかない。
文/犬飼淳