女性の管理職が極めて少ない国、日本
男女雇用機会均等法が施行されたのは1985年で、それから40年近くたったものの、社会的な性差の格差を示すジェンダーギャップ指数で日本は世界の最底辺をうろうろしている。その理由は国会・地方議会における女性議員と、企業の役員・管理職になる女性が、先進国だけでなく新興国と比べても際立って少ないからだ。
とはいえ日本は、法律上はあらゆる性差別が禁じられているし、その法律を守って会社の仕組みをつくっているのだから、「女性差別といわれるのは心外だ」と反論したくなる気持ちもわかる。しかしそうなると、「平等に昇進の機会を提供しているのだから、管理職になりたがらないのは女性の自己責任だ」ということになるし、実際、(大きな声ではいわないものの)このように考えている男性経営者はたくさんいるだろう。
日本の企業はなぜ、形式的には平等なのに、女性の管理職がこんなにも少ないのか?
この謎を解いたのが、社会学者の山口一男氏だ(『働き方の男女不平等』日本経済新聞出版社)。
山口氏は、アメリカなど欧米の会社では、役職と学歴はリンクしているという。多民族社会であるアメリカでは、人種や性別、性的指向などの(自分では変えられない)属性による差別を禁止するルールが徹底しているから、会社が採用や昇進・昇給を決める基準は、
①学歴や資格
②仕事の成果
③仕事の経験
この3つしか認められていない。「メリトクラシー」というのは、この3つの「メリット」を数値化し、それのみで(他の属性をいっさい考慮せずに)労働者を評価することで、これによって差別のないリベラルな社会が実現するとされた。
メリトクラシーの社会では、当然、管理職の比率は大卒が多く、高卒が少なくなる。これはアメリカだけでなく、世界中がそうなっている。
学歴社会なのだから当たり前だと思うだろうが、山口氏は世界にひとつだけ、この原則が通用しない国があることを発見した。それが日本だ。