社会現象的ブームの中で『ベルサイユのばら』を演じるということ

とはいえ、当時の『ベルサイユのばら』は爆発的な人気により社会現象化。月組・花組の舞台も大ヒットする中、雪組のトップとしてオスカルを演じることへのプレッシャーで当初はいっぱいいっぱいだったそう。

 演じることが決まって、コミックスを揃えようと思ったけど、人気がありすぎて、まったく手に入らへん状態だったんよ。デパートでイベントがあった時もね、ぶわーっと人が並んで、グッズが飛ぶように売れてました。オスカルのファンの中には、「人間がオスカルを演じるなんて」という方も多かったので、熱烈なファンのお眼鏡にかなうよう、メイク中はまんがの絵を鏡の横に置いたり、必死でした。オスカルの前髪の「クルン」の位置にもこだわって、糊でとれないようにおでこに貼ってたんです。でもステージの上ではずっと踊りっぱなしだから、すぐとれちゃう(笑)。


稽古中、原作者・池田理代子先生と対面する機会があったという。その時の感想を聞くと――


 …アントワネット様やッ! と思いました(笑)。当たり前ですが、まんが家さんが、描かれている作品とお顔が似ているとは限らないですよね。でも池田先生はアントワネット様そのもの。気品と美しさに感動したのを鮮明に覚えてます。

男役が演じるけど男ではないのがオスカルの難しさ。汀夏子が振り返る宝塚のベルばら_2