配慮が「すべての人が働きやすい環境」に
発達障害の特性を持つ人は、特性による困りごとが顕在化してない人(かくれ発達障害)も含め、多くの職場に潜在的にいることが想定される。一方で、「ただでさえやることが多くて忙しい職場で、発達障害の従業員への配慮までするのは難しいのでは?」と考える人もいるかもしれない。
しかし亀廣先生は、「これからの日本社会では、そういった考えを持つ会社が生き残っていくことは難しいのではないか」と言う。
「少子高齢化に伴い、日本全国の労働者数も減少してきています。働き手も不足するなか、発達障害の有無に関わらず『メンタルの病気になって勤務できないなら辞めてもらっていい』とは言えない状況になってきつつあります。
それに、発達障害を含め、障害を持つ従業員への合理的配慮(※障害を持つ人が社会生活に平等に参加できるよう、障害特性や困りごとに対してなされる配慮のこと)をするのは、障害者雇用促進法という法律でも義務づけられていること。職場がきちんと理解・対処をすれば、発達障害を持つ従業員もしっかり能力を発揮できるようになりますし、こころの不調や再発も防げます。
確かに、発達障害を持つ従業員への適切な対処方法を知ったり、適切な方法で接したりするためには手間も時間もかかります。ですが、発達障害者への環境を整えることは、結果として『すべての人が働きやすくなること』にもつながっていくと思っています」