ゆがんだ優越感に性欲が合わさって…
■ A男(16歳)の場合
A男はシングルマザーの母親と、5歳離れた姉とともに暮らしていた。母親はアルコール依存症でA男を虐待していたばかりか、姉も彼を日常的にいじめていた。そのため、A男は女性に対する苦手意識を膨らませていた。
中学生になった時、A男はクラスメイトからいじめられた。鬱々としていたある日、彼は発作的に学年で1番かわいいとされて人気のある女子のバッグから水着を盗んだ。この時の気持ちを次のように語る。
「クラスであの子はすごく人気があった。そんな子の水着を自分が持っていると考えたら、すごい優越感に浸れた。この子の秘密を俺だけが握っているんだっていう満足感があった。他の男たちがほしくても手に入れられないものを独占しているんだっていう気持ち」
水着を手に入れたことが、虐待といじめによる劣等感から彼を解き放ったのだ。彼にしてみれば、急に自分が大きな存在になったような錯覚に陥ったのだろう。
それ以来、A男は他の女の子の水着、体育着、ソックスといったものまで盗むようになった。やがて水泳の授業中に更衣室に忍び込んで下着を盗む、自宅の傍に張り込んで私服姿の写真を撮るといったことまではじめた。
A男によると、最初は性欲というより、優越感に浸るために犯行を重ねていたそうだ。それらを集めれば集めるほど、自分が偉大な人間になれるような気がしたのだ。しかし途中から、盗んだ下着や隠し撮りの画像で自慰をしはじめたことがきっかけになり、そこに性欲が合わさって性犯罪としての傾向が高まっていった。
気がついた時には、A男は更衣室に盗撮用のカメラを仕かけたり、小学生の女児を付け回したりするようになっていた。そして路上で立てつづけに3人の女性に襲いかかり、体を触るなどしたことで逮捕された。逮捕後、彼はこう語っていた。
「最初は気持ちがスッキリするからやっていただけでした。それで落ち着くことができた。でも、途中からなんかよくわからないけど、エロがしたいみたいな気持ちになってやっていました」