1冊でお腹いっぱいになれる『ネガ』
そして、『ネガ』はこれまたはらだ先生節が「これでもか!」と詰め込まれています。人間の仄暗い部分を拡散せず、登場人物たちを取り巻く狭い世界の中で完結させていく流れ。先生の描く感情の波に「なんだこれ〜! つらいけど楽しい~!」と身を委ねて楽しんでいます(笑)
表題作の「後悔の海」「スイメンカ」は幼馴染同士の三角関係を描いたお話なのですが、とにかくショッキングな終わり方で……。「こういう話が続くのかな……?」と若干不安になる、良い意味でスタートにふさわしくないようなお話です(笑)。
そんな衝撃のスタートの次に来るのは表紙のキャラクターが登場する「ピアスホール」。一見清楚で大人しそうなのに体中にピアスを付けている主人公(受け)と、モブっぽい地味だけどガタイのいいマッサージ店勤務の攻めが共依存という闇に堕ちていくお話で、いい感じに狂っている……。攻めと受けの体格差、攻めの男らしい腕の太さや血管、清楚な受けのうなじピアスにキュンとしてしまいます。ある意味ハッピーエンドでもあるこのお話は、『ネガ』の中で一番好きです(笑)。
また、コミックス最後に掲載されているBLなのに女の子が主人公のお話『わたしたちはバイプレイヤー』もおもしろい! 主人公の姫海さん(女)が同級生の脇川くん(攻め)と頭ごっつんこで人格が入れ替わったことがキッカケで、脇川くんの恋愛事情を知ってしまうというクレイジーなお話です(笑)。「最後にこのお話を持ってくるんですね!」と思わされるようなオチなのもまた良い。BL初心者にオススメはしづらいけど、1冊でお腹いっぱいになるくらい満足感がハンパないので、僕と同じような「BLなら何でも来い!」という方にはとてもオススメです!
取材・文/阿部裕華
撮影/小川遼