昭和の「戦え」から「戦おう」「戦うんだ」へ。“ヒーローソングの達人”藤林聖子が語る仮面ライダー歌詞の変遷_5
すべての画像を見る

時代を超えて変わったこと、変わらないこと

男性的なイメージが強い特撮ヒーローものだが、思い出に残る登場人物として、女性の役を挙げるファンも増えている。新しい時代の価値観を取り入れてきたのも、シリーズが長く続いてきた理由の一つだろう。

「男性主人公の作品の中では、かつて女性はさらわれたり、足手まといになったりといった、脇役が当たり前でした。同じ特撮ヒーローでもスーパー戦隊シリーズでは、以前は5人中1人だけ女性で、色は決まってピンクでした。今では、戦隊の中に女性2人、色も青と黄色とか、ずいぶん変わっています。

仮面ライダーでは、2002年の『仮面ライダー龍騎』の劇場版『EPIDODE FINAL』で、加藤夏希さんがシリーズ史上初の女性ライダーとなりました。以降、テレビシリーズでも女性ライダーが登場するのが定番となっています。同じ女性として、この活躍はとても嬉しいですし、こうして時代の移り変わりとともに変化してきたからこそ、仮面ライダーは幅広い層に楽しんでもらえる作品となっているのではないでしょうか」

昭和、平成、令和と変わりゆく仮面ライダーの姿に、それぞれの時代のヒーロー像もうかがえるという。

「昭和の仮面ライダーは男らしく、体格がよく、いかにも強そうな印象があります。その象徴が藤岡弘、さんですね。それが、だんだんと見た目も雰囲気も優しい男子になってきた印象があります。例えば、2000年の『クウガ』のオダギリジョーさん、2001年の『アギト』の賀集利樹さんなどは線が細くてシュッとしていて、どこか少年の面影があるような方が仮面ライダーに。その分、親しみやすく、視聴者との距離感が縮まっているのではないでしょうか。

明確に区切ることはできないのですが、歌詞に使われてきた言葉も、昭和は『戦え』と命令形だったのが、平成では『戦おう』と呼びかけるようになり、令和の今は『戦うんだ』と自分自身に言い聞かせるような言葉を選ぶようになっている。

昭和のポップスは、男女問わずみんなカッコつけた感じで、自分自身がドラマの主人公のような歌詞が多く、平成はお祭りのような突き抜けた明るさがあったなと懐かしくなります。今の若い人たちはファッションや話し方など自然体ですよね。自分自身をもっと素敵に見せたいという見栄や承認欲求が落ち着いてきているように思います。令和になり、コロナ禍になって早3年。これからはもっと個人個人が自分なりの価値を見出していく時代になるのかもしれません」

あらゆる時代に共通する仮面ライダー像はあるのだろうか。

「50年間、仮面ライダーに貫かれてきたのは“覚悟”。何が起きても、最後は自分自身で解決するという覚悟を持った孤高のヒーローは、今後も日本中、世界中でずっと愛されていくはず。100年続いてほしいと願っています!」

取材・文/小林 悟 撮影/田中 亘