女性向けライトノベルの鍵を握る“スパダリ”と“強い女”

そもそも男性向けライトノベルと女性向けライトノベルの違いはどこにあるのか。

この問いに対して、幅広いジャンルを手がける斧名田は作家、読者としての経験を元に次のように解説してくれた。

「まず女性向けの場合は、主人公が女の子であることが大前提かなと思います。それと、少年向けのライトノベルよりは恋愛を意識していて、相手役が必ずいて、その相手との関係性が変化していくというのが特徴ですね。

男性向けだとハーレムものが多い一方で、女性向けはたった1人の好きな人に好かれるものも多いのかなと思っています。私自身、もともとライトノベルや漫画、アニメなどのコンテンツを見るのが好きだからこそ思うのですが、女性は好きな人と結ばれてからのストーリーの方が圧倒的に長いんですよね。それから当て馬キャラを好きな読者さんが多い一方、ヒロインが当て馬に揺らぐのは嫌悪感を覚えやすい。あくまでも当て馬に一方的に好かれていて、そういう状況であっても本命を好きでい続けるヒロインの方がウケがよいのかなと思っています。

また、男性にウケるヒロインは少し欠点があり、かわいらしいキャラクターという傾向がありますが、女性からウケるヒーロー像は圧倒的に“スーパーダーリン”。お金もあって、イケメンで、性格も良くて……。完璧な男性像、スパダリを求めている印象です」

空前の女性向けラノベブーム! キーワードは“スパダリ”と“強い女” 新シリーズ「Dノベルf」始動の思い_04
“スパダリ”クロードとルチア

さらに、時代の流れと共に女性向けライトノベルのヒロイン像も変わってきていると斧名田。

「最近は、強い女性、誰の助けを借りずとも1人で問題なく、事件を解決できちゃう主人公が人気なように感じます。誰かに守ってもらうことが前提だと、読者の方がちょっとイライラしてしまったり、もっと頑張りなよと思っちゃうのかなと。だから、今回の作品『ちょっと一言』の主人公・ルチアも頼もしいキャラクターとなっていったんです」

その一方、斧名田自身は女性向け、男性向けということを強く意識しすぎないようにしているともいう。

「結局のところ、どこを喜んでもらえるかの違いはあれど、誰が読んでも楽しい作品を作ることが大切かなと思っています。そういう理由から男性読者さんにも、女性読者さんにも応援してもらえる人間的魅力があるキャラクターを生み出すことを大切にしているんです。

そうはいっても、そこが一番苦労しているのも事実で(笑)。初稿を提出して、改稿を重ねながら最初とは全然違った印象になるキャラクターもいます。例えば“いい人”キャラであっても、その“いい人”のベクトルが違う方向になっていったり……。そつなくこなしちゃって、とりとめもなくたどり着いちゃったではおもしろみにかけるので、どうしたらいいかということには毎度頭を悩ませていますね。

今回の作品の場合だと、“スパダリ”なクロードをどう描くかは悩みました。そういう理由から、最初は味方か敵かわからないポジションにおいて、バランスを取ったんです」

空前の女性向けラノベブーム! キーワードは“スパダリ”と“強い女” 新シリーズ「Dノベルf」始動の思い_05
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