『緑の光線』(1985)Le rayon vert 上映時間:1時間34分/フランス
友人とのギリシャ行きをドタキャンされたデルフィーヌ(マリー・リヴィエール)のこじらせヴァカンス。ひとり旅も団体旅行も嫌という彼女は、友人カップルに同行したり、山へ出向いたりと迷走し、3か所目に訪れた海辺のリゾート地ビアリッツで、太陽が水平線に沈む一瞬にだけ見える「緑の光線」の話を耳にする。
聖母の岩やそこに繋がるギュスターヴ・エッフェル設計の鉄橋といった名所はあくまでもさりげなく映し出され、デルフィーヌと友人たちの会話で恋や人生の機微を浮き彫りにするあたりが、エリック・ロメールならでは。
こじらせ女子デルフィーヌの嘆きがじれったければじれったいほど、自分や他人の心が読めるようになるという言い伝えがある“緑の光線”へのロマンが募る。
『プロヴァンスの贈りもの』(2006)A Good Year 上映時間:1時間58分/アメリカ
『南仏プロヴァンスの12か月』で知られるピーター・メイルの小説をもとに、旧知の仲のリドリー・スコット監督が映画化。
ロンドンの凄腕ブローカーのマックス(ラッセル・クロウ)は、ワイン醸造家である叔父の遺産相続手続きのために20数年ぶりにプロヴァンスへ。少年時代に毎年夏休みを過ごしていた屋敷と葡萄畑をすぐに売り払うつもりだったが、シャトーでの日々が、金儲けしか頭になかった人生を見つめ直させる。
スコット監督作は映像の美しさには定評があるが、自身もプロヴァンス暮らしを愛するだけあって、陽光溢れるプロヴァンスの美しさは格別! ひとつひとつの風景に憧れをかき立てられて、かの地で美味しいワインを楽しみたくなる。
文/杉谷伸子