感情として死んでほしくなかった

――大変そうですね。

連載中はゼーゼー言いながらも走るのを止められない心境でした。けれど、今は歩きながら前に進んでいる感じです。でも、気が抜けると絵もどんどん下手になってしまいますので、早めに次回作を始めなければと思っています。アイスホッケーの道具も更に買い集めていて、部屋にダンボールがどんどん積み重なっています。

『ゴールデンカムイ』最終巻ラストの真相…野田サトル1万字インタビュー#1_2
『 ゴールデンカムイ』連載中に数年かけて探し出した源間兄の防具

――もう前作のアイスホッケー漫画『スピナマラダ!』の完全版の準備をし始めているんですね?

『ゴールデンカムイ』最終巻ラストの真相…野田サトル1万字インタビュー#1_3
『スピナマラダ!』は野田サトルの初連載作品でもある

はい。『ゴールデンカムイ』の連載原稿が終わってすぐに苫小牧へ撮影に行ってきました。自然の景色が変わってしまうので春のうちに撮影したくて。ヘトヘトになるまで森の中を歩いてきました。まだTV アニメ四期や実写化等、『ゴールデンカムイ』の仕事はありますけど、心機一転ゼロからやり直さなくてはという感じです。

――では、『ゴールデンカムイ』本編を振り返って、最終巻のお話をお聞きしたいのですが、個人的に牛山さんが亡くなったのは非常に衝撃的でした。野田先生は公式ファンブックの質問で、「殺すのをためらったキャラはいない」と答えていらっしゃいました。牛山さんもそうなのでしょうか。

実は唯一、退場させるかどうか悩みました。感情として死んでほしくなかった。
でも結果、最高の自分で死ねたのだから良かったのだと思います。俳優のリバー・フェニックスは若く最も美しいときに薬物中毒で亡くなっているのですが、生前、「死体置き場の中の一番カッコいい死体でありたい」と言っていたそうです。
作品作りの観点から言いますと、アシㇼパにとって愛すべき人物を次々と殺すことで、「この金塊争奪戦を自分が終わらせなければ」とアシㇼパに決断させる。
つまり金塊をなかったことにするという選択ですね。
その選択を読者さんにとっても説得力のある選択にするには、読者、そして作者の僕も愛するキャラたちを殺していくしかなかった。