ゴスペルの女王の知られざる半生

みなさま、こんにちは。
ヨガ講師やセラピストなど女性のカラダとこころの健康にまつわる活動をしている、仁平美香です。

先日劇場で『エルヴィス』(2022)を鑑賞し、世界でもっとも売れたソロアーティストである、エルヴィス・プレスリーの原点はブラックミュージックにあったことを知りました。幼少期にゴスペルに触れ、デビュー時にはブルースを歌い上げるなど、人種差別が現在よりもはるかに激しかった当時としては、なかなかない経歴で、後にロックンロールの王様と呼ばれた…その人生の苦悩と輝きに触れました。
そこで、同じく教会やゴスペルが原点にあるソウルの女王、アレサ・フランクリンの半生を描いた映画を紹介したいと思い、今回のテーマには『リスペクト』(2021)を選びました。

歌は心を移す鏡。アレサ・フランクリンの半生を描いた映画『リスペクト』_1
“クイーン・オブ・ソウル”の異名を持つアレサ・フランクリン
Globe Photos/アフロ

1950年代、類い稀な歌唱力で少女のときから天才と呼ばれていたアレサは、神父で公民権活動家の父から、愛情と期待とともに、強い束縛を受けて育ちます。
母の死をきっかけに、悲しみから大好きな歌を歌うどころか、話すこともできなくなった際にも歌うことを強要され、自分の意見は押し殺した少女時代。

父が選んだ大手のレコード会社でデビューしてから数年は、歌唱力は充分なのになかなかヒット曲に恵まれず、薦められるままに様々なジャンルの曲を迷い焦りながら歌う日々を送ります。

そんな中、メアリー・J・ブライジ演じる大先輩の歌手ダイナ・ワシントンから「何でも歌って節操がない。自分に合う歌、心が動く歌を探しな。でなきゃ成功はおぼつかないよ。」と、厳しくも温かい叱咤を受けます。

ポップスからブルースまでいろいろな曲を歌ってきたアレサでしたが、この出来事や恋に落ちたことをきっかけに、父と距離を置き、結婚。そしてレコード会社を移籍し、言われるがままではない自分の人生や音楽を少しずつ見つけていきます。

その後も夫からの裏切り、そして幼少期に父の知人から受けた大きなトラウマとなる経験のフラッシュバックとも闘い、壁を乗り越えていくアレサ。

中でも、アルコール依存症で歌うこともままならない絶望の時期に、亡き母がアレサに寄り添いながら『アメイジング・グレイス』を歌い、立ち直るきっかけとなるシーンは印象に残っています。