ホラー界の人気者“透明人間”が現代的に進化

『透明人間』(2020)The Invisible Man 上映時間:2時間4分/アメリカ
19世紀末、『タイムマシン』等を生み出したSF作家、H・G・ウェルズが誕生させた有名なモンスターのひとつが透明人間。これまで数えきれないほどスクリーンに登場してきたホラー界の人気者だ。
彼らの多くは、実験によって体が透明化し、元の体に戻れなくなって後悔と悲しみに苛まれるモンスターという場合が多いのだが、2020年版の『透明人間』には、そういったネガティブな感情がない。というのも本作では、透明人間が生まれるプロセスに、これまでにないアイデアを盛り込んでいるため、その邪悪さが際立つようになっている。主人公は透明人間に追われる元恋人のほう。透明人間は実体のないストーカーのような存在だ。しかも彼は、ソシオパスでありDVを振るう男という設定なので、古典的なホラーのテーマ&モンスターが、驚くほど現代的に生まれ変わっているのだ。

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Everett Collection/アフロ

そういう元恋人と果敢に戦う女性が、ドラマシリーズ『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』(2017〜2021)でフェミニズム運動のシンボル的存在にもなったエリザベス・モスというキャスティングもお見事。監督は『ソウ』(2004〜2010)シリーズのリー・ワネル。製作はハリウッドのホラーメーカー、ジェイソン・ブラム。ふたりのホラーマスターが手を組んだからこその、古典ホラー映画の進化系になっている。