在宅緩和ケアで穏やかに暮らす選択肢

私の在宅緩和ケアの現場では、病院で治療をやめたり、あるいははじめから治療を拒否した患者さんが、専門の医師や看護師やケアマネジャーなどの在宅スタッフたちの支援を受けながら、自宅で穏やかに暮らしています。

すでに死が近い終末期にもかかわらず、点滴などのチューブをつけている人や、酸素マスクを使っている人はごくわずかです。それどころか、食べたいものを食べたいときに食べ、家族との思い出話に花を咲かせ、テレビ番組に笑い声をあげたかと思えば、愛煙家はタバコまで嗜み、大好きな日本酒を寝酒に飲んでいる人もいます。

亡くなるギリギリまで自分の足でトイレに行くことなんてふつうで、外出をしたり、ゴルフを楽しんでいる人さえいます。

終末期の患者さんは、病院の手厚い医療から離れても、すぐに亡くなることはなく、こ うして生きたいように生きられる。そして、患者さんと家族が感謝の気持ちを伝えあって、 最期は眠るように穏やかに亡くなっていけるのです。

自宅で看取りを終えた家族は、悲しみや絶望ではなく、人生を最後まで自分らしく生き抜いた患者さんに、「おめでとう」と声をかけたいような、そんな満足感さえ表情に表れていることも少なくありません。