甲子園での最後の打席

4万6000 人を超える大観衆。3点をリードした7回裏の先頭打者として、代打で甲子園のバッターボックスに向かう。スタンドには紺色に白字で「鳥谷敬」の名前が染め抜かれたタオルが無数に掲げられていた。

手作りの応援ボード、たくさんのワッペンがついたオリジナルユニフォーム、いい時も悪い時も声援を送り続けてくれたファンが奏でるヒッティングマーチ……。

ライトフライに倒れたものの、ベンチに下がる時に聞こえたのは、間違いなく人生で一番大きな歓声だった。

8回表から、そのまま遊撃手として守備についた。審判の方と挨拶を交わし、丁寧に足元の土をならしながら、見える景色を味わい、かみしめる。

「鳥谷!」
「鳥谷〜〜!」

まるで直前に逆転タイムリーヒットでも打ったかのような盛り上がりに、自分のこれまでの歩みと、今日この場所を守る意味に思いをはせる。ライトスタンドに向かって、帽子に手をやりながら軽く頭を下げる。

「ありがとう」

試合を藤川球児さんが締め、マウンドでみんなと勝利のハイタッチを交わす。チームはシーズン最後の6試合を6連勝でフィニッシュ。広島に代わって3位に滑り込み、2年ぶりにクライマックスシリーズ進出を決めた。