鹿沼が「隣の餃子」ではなく、一見遠そうな「シウマイ」を持ってきたのは、強い危機感があったからである。
鹿沼は、人気観光地の宇都宮市と日光市に隣接する好立地ではあるが、観光客が足を運ぶことはほとんどない。
人口も1999年の10万4798人をピークに減少の一途をたどる。2022年6月1日現在は9万2557人だが、31年には約8万8000人になると予測される。とりわけ30歳未満の若い世代が少ないという、典型的な地方都市の課題を鹿沼も抱えているのだ。
加えて、15年9月に発生した関東・東北豪雨や、19年の台風19号によって死者が出るほどの自然災害に見舞われたことも、近年、鹿沼の人々を意気消沈させていた。
町おこし政策の旗振り役を務めてきた鹿沼商工会議所経営支援課の水越啓悟課長は、このまま地元が衰退していくのが見ていられなかった。
「かぬまシウマイ」始まる
そこで始まったのが、「かぬまシウマイ」による町おこしである。「かぬまシウマイ」とは、町おこしの取り組みを進める中で、21年2月から商工会議所を中心に使われ始めたフレーズである。水越さんによると、定義としては鹿沼で製造・販売されるご当地シウマイの総称のこと。地域を代表するブランドとして育て上げるために、今後は商標登録なども進めていく。
これまでにも「サイクリング」や「もの作り」など地元に以前からある特色を前面に打ち出した企画を実施してきたが、結果的に「シウマイがいちばん引きが強かった」(水越さん)というのだから、町おこしは面白い。
「メディアの取材が増え、企業から『何か一緒にできないか』という問い合わせも多いです」(水越さん)
今では駅前に「シウマイ像」を設置して、さらに、市内の至るところにフラッグやのぼりを掲げるなど、あの手この手で「かぬまシウマイ」をアピールしている。
そして地元のスーパーマーケット「ヤオハン」にシウマイ専用コーナーができ、来店客が買い求める光景もよく見られるようになった。