進化したAppleシリコンの秘密

Appleは2020年から徐々に、Intelチップから自社設計のAppleシリコンへと、Macの“心臓部”の移行を進めてきた。新13インチMacBook Proに搭載された「M2」は第2世代のAppleシリコンと位置づけられるが、初代「M1」と比較した際、ベンチマークスコアではCPUが25%前後、GPUは42%前後のパフォーマンス向上が確認できる。

一般に、チップの高性能化には消費電力の増大が付き物だと考えられてきた。そのため、長時間のスタミナを持つノートパソコンには処理性能を抑えたチップを、逆に最高峰の性能を発揮するデスクトップパソコンには、ドライヤーと同じレベルの電力を消費するモデルも存在する。後者の場合、当然、バッテリー駆動は現実的ではない。

Appleシリコンは、そうした処理性能と消費電力の常識を打ち破り、高い性能を発揮しながらバッテリー駆動を実現するチップを目指して開発されている。M2では、最新の5nm(ナノメートル)製造技術を用いることで、パフォーマンス向上と電力の節約を両立することに成功した。

加えて注目したいのが、14インチ/16インチMacBook Proに用意されていた「メディアエンジン」が、新たにM2にも採用されたこと。メディアエンジンは、ビデオのエンコード/デコードといった処理を高速化する役割を担う。

このメディアエンジンの効果は、ビデオ編集や書き出しには絶大だ。たとえば15分の4K動画を書き出す場合でも、バッテリー消費を数%に抑えることができた。これはメディアエンジンがCPUやGPUの負担を削減していることを意味している。新13インチMacBook Proなら、iPhoneで撮影した高圧縮4K動画をはじめ、今後iPhoneが対応すると噂されている8K動画の編集も難なくこなせるだろう。

これまで、27万4800円の14インチMacBook Pro以上のモデルを選ばなければ、メディアエンジンの恩恵を受けることはできなかった。見方を変えると、ビデオ編集により強いマシンが、10万円も安く購入できるようになったのだ。動画を編集したいが30万円近くのMacには手が出ないという人、あるいは出先で動画をサクサク編集したい人にとって、新13インチMacBook Proはその期待に応えてくれる。

電源確保のストレスから解放される新MacBook Proか、個性溢れる新MacBook Airか?_4
キーボード部分にはTouch BarおよびTouch IDを内蔵した電源ボタンを配置。また、内蔵スピーカーが空間オーディオに対応したことで、より豊かな音楽体験が味わえるようになった
電源確保のストレスから解放される新MacBook Proか、個性溢れる新MacBook Airか?_5
インターフェイスには、筐体左側に2つのThunderbolt / USB 4ポートを搭載。14インチ/16インチMacBook Proおよび新MacBook Airに搭載された充電用の「MagSafe 3」ポートは非採用となった