「使わないと損という感覚です」

同じ立地で、食材費や家賃、最低賃金といった条件が同じなのに、同等のメニューを1割ほど安く出せる店がある──。税と社会保険料を不正に免れれば、その分が価格競争力につながりかねない。

「経営・管理ビザが厳格化された際、『真面目な飲食店がかわいそう』という論調もありました。しかし真面目か否かの基準は、合法的に経営し、適正に納税しているかでしかない。不正が通りやすい抜け穴を放置して、損をするのは課税から逃れる手段がない店舗と従業員であり、タダで国内インフラがすり減る日本側です」

国内でもWeChat決済ができるケースも(写真/Shutterstock)
国内でもWeChat決済ができるケースも(写真/Shutterstock)
すべての画像を見る

では、こうした“ヤミ支払い”を利用する当事者に罪悪感はないのか。

「ないですね。日本で生きるための仕組みとして共有されています。コスパの良い手段があれば、使わないと損という感覚です。制度やルールも、実際に処罰されて初めて意味があります。信号を守らない人が多ければ物理的な柵を立てる国です。張り紙ひとつで世間体を気にしてルールに従う日本人とはだいぶ感覚が違います」

こうした実態がどこまで広がっているのかは慎重に見極める必要があるが、国外決済や申告されない所得をどう把握するかは制度上の課題として残る。

そうしたなか、在日中国人の間で最近のホットな話題が「帰化」だという。

「7月に永住許可が厳格化されるとの報道が出た際、中国の検索サイトでは、『帰化』がホットワードになり、予測変換では『帰化すれば親は連れて来られるのか』という類の趣旨の単語が並びました」

外国人の受け入れをめぐり、政府は「秩序ある共生」を掲げている。受け入れる側と暮らす側の双方にルールの順守を求めるのであれば、制度を設けるだけでなく、その実効性をどう担保するかも問われる。決済や雇用の形が変化するなか、日本の税や社会保障、在留制度もまた、実態に即した検証と見直しを迫られている。

■北上 行夫  ジャーナリスト/中国ビジネスコンサルタント
90年代に週刊誌記者として活動。00年に中国に渡り、同年12月から15年まで現地日本人向けの経済誌「KANAN MONTHLY(和商瞭望)」の編集顧問を務める。2013年より知的財産(IP)ビジネスの企画運営も手がける。その後日本に戻り、2023年より中華圏マーケット調査&ライターが集う「路邊社」に参画。テーマはメディアが担う経済安全保障。
X(旧Twitter):@KitakamiYukio

※「集英社オンライン」では、今回の事件に関する事件、トラブルについて情報を募集しています。下記のメールアドレスかX(旧Twitter)まで情報をお寄せください。

メールアドレス:
shueisha.online.news@gmail.com

X(旧Twitter)
@shuon_news  

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班