中国人向けの求人で見えた「円+人民元」の給与支払い
「日本にいて、日本のインフラを使いながら、国外の決済手段を使える者だけが(その義務があるにもかかわらず)課税を免れられる。それが現状です」
こう語るのは、中国で約15年間、日本企業向けビジネス月刊誌の編集顧問を務め、在日中国人社会にも詳しい北上行夫氏だ。
「“ヤミ決済”の始まりは2010年代の爆買い期です。日本の店舗でWeChat決済が広がると、中国人客は数%の海外決済手数料に気づいた。そこで中国人経営の店で、店側の人民元に紐づいた中国国内アカウントに支払い、手数料を回避する手口が横行しました。
日本の金融機関に直接の取引記録が残らず、国内の資料だけでは資金の流れを追いにくい。税務当局は取引の端緒をつかむことすら困難になります」(北上氏、以下同)
今や、日本にあるガチ中華街の中小規模の店舗では「WeChatで払えばいくら安くなるか」を聞くのが当たり前で、「お互い消費税は払わないよね、という感覚」(同)なのだとか。
ただし仕入れ記録が残る輸入品では、こうした値引きには応じないという。何をやれば発覚しやすく、どうすれば見つかりにくいか。その境界線を彼らは正確に把握しているのだ。
なお、日本国内で正規に導入されているWeChatの加盟店決済では、利用客には人民元で請求される一方、加盟店には決済事業者から日本円で売上金が入金される。問題なのは、こうした決済とは異なり、中国国内のアカウントを通じて代金をやりとりするケースだ。
だが、北上氏は「観光客のヤミ決済なら、まだマシ」と言う。深刻なのは、在日中国人の小規模ビジネスで横行する賃金の“ヤミ支払い”だ。給料の一部、または大部分を、WeChatや送金などによる人民元で支払ったりするほか、日本円の現金で支払うケースもある。
北上氏が解説する。
「私が中小規模の中国人向けの求人に目星をつけて中国語で問い合わせると、やはり大半の会社で、賃金の半分を円、残りを人民元の送金やWeChat支払い、もちろん全額を円の現金支払いにするといった相談ができました」
日本で働いているにもかかわらず、日本の税務当局に捕捉されない形で給与の一部を払うことで、所得税や住民税、社会保険料の一部を払わずに済ませるということである。














