「今は娘もだいぶ落ち着いてきましたが…」

外出中にも、B子ちゃんが怖がる場面があった。

「特に、街で外国人の配達員さんを見かけると、娘の足がピタッと止まって、私の手をギュッと痛いくらいに握りしめてくるんです。ああ、この子は今もこんなに怖いんだなと……」

母親の手を握る娘の力が、事件の記憶が消えていないことを物語っていた。

一方、A子さんが納得できなかったのが、利用したフードデリバリーサービスの運営会社の対応だった。

「事件当日は、運営会社がAIでの返信でまともな対応をしてくれず、翌日には『今回のご利用はいかがでしたか?』という自動送信のアンケートメールが届いたんです。自動送信だから仕方ないかもしれませんが、娘があんな被害に遭った直後に『ご利用の評価をお願いします』なんてメールが来て……言葉になりませんでした」

後日、A子さんは同社に電話をかけ、娘が配達員からわいせつ被害を受けたことを伝えたという。

「7分ほどの会話の間、対応したオペレーターから謝罪の言葉は一言もありませんでした。『確認します』『折り返しご連絡します』を繰り返すばかりで…」

A子さんは「最後は向こうから一方的に電話を切られた」と振り返る。その後も折り返しの連絡はなかったという。

実際にA子さんが注文した品物。「玄関先に置いてください」と置き配の指定が書かれていた(A子さん提供)
実際にA子さんが注文した品物。「玄関先に置いてください」と置き配の指定が書かれていた(A子さん提供)
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9月25日までに、警視庁北沢署はコミルジョノビッチ容疑者を逮捕した。事件から約2カ月半。容疑者が逮捕されたことは、A子さんにとって一つの区切りとなった。

それでも、娘の生活がすぐに元通りになるわけではなかった。

「今でも朝は学校まで送り届けています。事件があってから、手を繋いでくることが増えて、私にベッタリと甘えてくるようになりました。それだけ心が不安でたまらないんだと思います」

A子さんは、少しずつ落ち着きを取り戻している娘の様子を見守っている。

「今は娘もだいぶ落ち着いてきましたが……もう二度と、デリバリーを頼むことはありません」

事件前と同じように、自宅で暮らし、学校へ通う日々は戻ってきた。ただ、登校する朝、B子ちゃんは以前よりも母親の手を握るようになった。その小さな変化が、事件のあとも母娘の生活に残っている。

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取材・文/中山美里 集英社オンライン編集部ニュース班