「ドアを触るのも嫌だ…」

事件後、B子ちゃんは自宅の玄関を怖がるようになった。それまで毎日使っていたドアも、男が触れた場所だと思うと、近づくことさえ嫌がったという。

「『ドアを触るのも嫌だ』と言っていた娘のために、消毒液を大量に買ってきて、犯人が触れたと思われる玄関やドアノブ、壁のすべてを念入りに消毒しました」

A子さんは、娘を安心させようとした。

「娘には『いっぱい消毒したし、塩もまいて清めたからね。もう大丈夫だよ』と伝えました。でも、内心は犯人も自宅を知っているので怖い。引っ越したくてたまらなかったんですが、シングルマザーのため金銭的な余裕がなくて断念するしかありませんでした……」

コミルジョノビッチ容疑者が住んでいたアパート(撮影/集英社オンライン)
コミルジョノビッチ容疑者が住んでいたアパート(撮影/集英社オンライン)

娘を安心させるために「もう大丈夫」と伝えながら、母親自身も恐怖を感じていた。

しかも、事件が起きたのは自宅だ。外へ出れば忘れられるというものでもない。玄関を開けるたびに事件を思い出すことになり、一人で留守番させることができなくなった。

「娘を1人で家に待たせることが怖くて、夏休み中は友人たちの家を日替わりで転々とさせてもらいました。仕事を終えたら、その友人の家に迎えに行って一緒に帰るという生活でした」

仕事を続けながら、娘を一人にしないための生活が始まった。事件前なら、何気なく過ごしていたはずの夏休みだったが、A子さんは娘の預け先を探し、仕事が終われば迎えに行く毎日を送った。

B子ちゃんの変化は、それだけではなかった。

「インターホンが鳴ると、ドアが開いている間、娘は逃げるようにトイレに閉じこもってしまう状態がしばらく続きました」

配達員が訪ねてくる可能性のある玄関は、娘にとって恐ろしい場所になっていた。