イスラエルの残虐性が並外れていた

私がアメリカを批判し、イランの肩を持つのはイランがムスリムの国だからだと思われるかもしれませんが、これは何よりも正義の問題であり、アメリカによる不正義の問題なのです。

そう考えると、宗教や肌の色などは関係ないと思います。戦争をするのであれば、双方にそれなりの力があるべきです。一方が弱く、他方が強い場合、強い方の手助けをして弱い方を攻撃するのは不正義です。

ですから、イランを攻撃するならば、イランが核兵器を持てないのと同じように、イスラエルも核兵器を持ってはなりません。セルビア人とボスニャク人の問題についても同様です。

セルビア人がボスニャク人を攻撃した際、セルビア人側には武器がありました。当時の国際社会では、国連を含め、ボスニャク人側への武器供与は認められませんでした。つまり、弱い立場にあったボスニャク人側は自衛すらできなかったのです。

一方で、セルビア人側は攻撃できたのです。これは不正義です。戦争をするなら、互角でなければなりません。24歳の青年と12歳の子どもがサッカーで互角の戦いをできるわけがないでしょう。このように、世界では極めて深刻な不正義が横行していて、それはどこよりもイスラエルに見られるのです。

イスラエルの建国はまったく正義とは言えません。他人の土地を奪ってよいのでしょうか? 私はアメリカの人々に「もしテキサス州がイスラエルになったらどう思いますか?」と尋ねましたが、彼らは沈黙し、答えませんでした。

自分たちの土地なら譲らないとわかっているのです。他人の国ならそれを奪ってイスラエルに与えるのです。その後、その国の人々が抗議すると、その人々を殺しました。これもまた不正義です。私は、肌の色や民族などを問わず、何をするにしても常に公正であるべきだと考えるのです。

欧米の人々は「法の支配が必要だ」と言います。法の支配とは何でしょうか? 人を殺すことが法の支配なのでしょうか? 彼らは人を殺し、殺人者を助ける一方で、犠牲になった人々を助けようとはしません。殺人者を助けたうえに、さらに多くの人を殺すように促しているのです。

ガザでは今、明らかにジェノサイド、大量虐殺が行われています。欧米はイスラエルに武器を供給しています。ハマスは、イスラエルによって何年も拘束状態にある人々を解放するために戦っています。

彼らを連れ戻したり、裁判にかけたりする機会などありません。ですから、彼らを取り戻すためにハマスが採れる唯一の手段は、イスラエル人を拘束して人質の交換を行うことであり、実際にそうしています。

しかし、ハマスが予想していなかったのは、イスラエルの残虐性が並外れていたという点です。イスラエルはガザを攻撃するだけでなく、すべてのパレスチナ人を殺害し、ガザからパレスチナ人を追い出そうとしています。これはイスラエルの不正義であり、そこには正義のかけらもありません。イスラエルはあらゆる法を破り、海上の船に対しても、自国の領海外であっても攻撃することさえできます。

私は、世界が第二次世界大戦に突入しようとしていた時代を生きてきました。その経緯は今の状況と似ていて、ドイツに対する圧力があり、ドイツもまた良くない行動をしていました。

マハティール・モハマド氏 写真/アフロ
マハティール・モハマド氏 写真/アフロ
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当時イギリスの首相であったチェンバレンは戦争を回避しようと試みましたが、うまくいきませんでした。結局、ドイツがポーランドやチェコスロバキアなどを占領しようと動いたことが、戦争を始める要因となりました。

アメリカも、真珠湾攻撃をきっかけに参戦しました。現在起きていることもまた、まるでその方向に向かっているかのように見えるのです。それぞれが戦争を正当化できる理由や道筋を探そうとしているのです。

著者/マハティール・モハマド 編・訳/久志本 裕子

マハティール 百年の思想 イスラーム、日本、脱植民地主義への道
マハティール・モハマド (著), 久志本 裕子(編・訳)
マハティール 百年の思想 イスラーム、日本、脱植民地主義への道
2026/9/17
1,144円(税込)
240ページ
ISBN: 978-4087214291
なぜマレーシア元首相マハティールは、日本に希望を見たのか。
1世紀を生き、植民地支配、日本占領、独立、国家建設と発展をその目で見つめてきた彼の思想の核心は、単なる反欧米でも経済成長至上主義でもなく、イスラームの倫理を基盤とした公正な社会と世界平和への希求にあった。
本書は、彼の日本への高い評価とルックイースト政策の真意、植民地主義を超える視座、宗教間共生への提言を立体的に描く。混迷する国際社会のなかで、日本とアジアが果たすべき役割を問い直す、百年の知恵が凝縮された1冊。

◆「はじめに」より◆
今日の日本は、地域の大国間で高まりつつある緊張を背景に、自国の役割を模索して、内なる葛藤に直面しているように見えます。
日本は、明確な立場を打ち出し、いかなる影響にも左右されないだけの勇気を持たなければなりません。
日本には独自の強みがあり、地域の緊張や紛争、さらには戦争の可能性を高めるような特定の陣営に与するべきではありません。
ーーマハティール・モハマド

◆目次◆
第1章 イギリス植民地統治下の少年時代
第2章 日本との出会い
第3章 思想の原点
第4章 イスラームはなぜ誤解されるのか
第5章 宗教の共生は可能か
第6章 モデルとしての日本
第7章 公正な世界に向けた日本とマレーシアの役割
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