人が来ない店で、自分だけが休めなくなった
坂本さんは50歳で長崎の百貨店を辞め、妻と東京へ出てきました。再就職の難しさに直面した末に選んだのが、コンビニ経営でした。商売の経験はあっても、24時間動き続ける店を自分で背負うのは、初めてのことでした。
都心なら客が多く、売上も見込める。しかし、客が多い場所に、働き手も集まるとは限りません。採用する側から見た都心の難しさは、そこにあります。求人を出しても日本人の応募が集まらず、採用できても長続きしない。坂本さんの店も、慢性的な人手不足に苦しみました。
外国人の採用は、国際交流をしたかったから始めたことではありません。まず、今日の店を開けなければならない。その切実さから、留学生たちに頼るようになったのです。
ところが、採用すればすべて解決するわけではありませんでした。スタッフが店の商品を盗む出来事もありました。一緒に働く相手を信じられなくなると、大切な仕事は自分で抱えるようになります。発注も、お金の管理も、自分でやった方が安心だと思ってしまう。
その結果、休めなくなる。疲れれば発注や売場への目配りが鈍り、教育にかける余裕もなくなる。店の状態が悪くなれば、さらに自分が働いて埋め合わせる。責任感が強いほど、抜け出しにくい循環です。
私は、ここに小さな店の経営の難しさを感じます。「人に任せればいい」という助言は正しくても、任せて失敗した時の損失を引き受けるのはオーナーです。怖さは簡単には消えません。ただ、誰も信じないことで店を守ろうとすれば、最後には自分の身体がもたなくなる。坂本さんには、任せるための方法をつくる必要がありました。













