「43歳の自分だって今しかない。今が一番早いんですよ」
――ただ、ちょっと残酷なことを言うと、失った青春を今から同じ形で取り戻すことはできないですよね。
だからこそ、若い頃の時間ってすごく価値があると思うんですよ。今の僕が20代に戻ることはできない。もっと言えば、43歳の自分だって今しかない。だから、いつまでもこんなことをやってちゃダメだ、と思っちゃうんです。今が一番早いんですよ。
――「まだ43歳」とも言えるけれど、「もう43歳」でもある。
真面目な話、45歳、46歳まで格闘技をやっていたら、そのあとに何かやりたいと思っても、できなくなることがある。体が動く時間も限られている。格闘技って、やろうと思えばまだやれちゃうんですよ。だから怖い。
――今までとは違う人生を作らなければいけないわけですね。
そうですね。最初は、この夜の商売というか、格闘技の世界から離れて、真っ当に生きることだと思っています。そうしないと人生が壊れていく。ここから何かを積み重ねていかないといけない。
経済的な話じゃないんですよ。「引退したらどうやって食べるんですか」という話じゃなくて、自分が今までやってこなかったことをどうするか、という話。僕はそこを、今けっこう真剣に考えています。
――青木さんは格闘技を「夢を掴む」ものではなく、「生存戦略だった」と話していました。極限まで向き合ってきた達人が、生き残るために身につけた武器を今度は手放すという作業は簡単なことではないと思います。
柔道も、警察官になろうとしたことも、格闘技も、僕にとってはずっと生存戦略だったんですよ。「これが夢です」というより、生き残るための爪だった。だから、それをなくした自分がどうなるのかは、やっぱり怖いですよね。
今までは、それがあれば何とかなると思って生きてきたわけですから。それを自分から手放して、そのあと何が残るのか。そこはやっぱり難しいです。
――でも、その先を見てみたい気持ちはありますか?
あります。格闘技をやってきた時間を否定する気は全然ないですよ。それがあったから今があるので。ただ、ずっと同じことを続けるのも違う。20代には戻れないし、43歳なら、43歳でしかできないことがあるはずじゃないですか。
でも、50歳になってから「43歳のときにやっておけばよかった」ということだってある。だったら、今やるしかない。今が一番早いんですよ。
――長渕剛の歌詞みたいですね。
やるなら今しかねえ♪ 「西新宿の親父の唄」じゃないんだよ(笑)。でも、本当に一つ一つやっていかないと、60歳、70歳でツケが来る。だから今、ちゃんとやらなきゃなと思っています。
取材・文/小谷進平(集英社オンライン編集部)
撮影/松本淳(Peta Photo Studio)















