「僕、“B面”がまったくないんですよ」

――格闘技を離れたあと、具体的にやりたいことはありますか?

「何をやりたいんですか?」と聞かれたら、正直、今までやってこなかったこと、失ったことをやりたいです。これは本当の話です。僕、小学校3年生から柔道をやっているから、普通のことを全部やっていないんですよ。

勉強もしていないし、青春もしていない。アルバイトすら怪しい。学生の頃に山崎パンで何回かやったぐらい。だから「B面」がまったくないんですよ。

――B面。

そう。だからB面をやりたい。プロレスも、そういう意味では僕にとってB面なんですよ。体が動くうちに、格闘技をやっているときにはできなかったことをやりたい。

―― とはいえ、早稲田大学も卒業していますよね。学生時代をもう一度ちゃんとやりたい、遊びたいみたいな感覚ですか。

僕は単位も卒論も、「とにかく卒業できればいい」ぐらいで適当にやり過ごしていましたから。高校時代の青春も本当にしていないです。彼女と制服を着て一緒に帰った、みたいな思い出もない。

朝6時に学校へ行って、夜9時に帰るような生活をしていたので。全部、競技に向けて突っ込んでいたんですよね。

今、静岡で自転車に乗って河原を走ったりするんですけど、そこでふと思うんですよ。「ああ、高校時代に他の部活の友達が話していたことって、本当にやってたんだ」って(笑)。

自転車と青木
自転車と青木

――どういうことですか。

静岡の河原なんて平日ほとんど人がいないじゃないですか。高校の頃、友達が「こないだ河原でさ…チョメチョメしちゃってさ」みたいな話をしていても、当時の僕には全然わからなかった。今になって「あいつら、本当にここでそういうことやってたんだ」って(笑)。

当時の僕は、朝から晩までトレーニングですから。街を歩いていても、「ここが、あいつらが言っていた“放課後に寄る店”みたいなものなのか。本当に実在するんだ」って思う。大学を出て、そのまま格闘技をやっているから、やっぱり人生が偏っているんですよ。

――かなり大きなものを格闘技に突っ込んできた。

全部です。だから今、その反対側にあったものを見てみたいんでしょうね。