関税は、輸入品の国内価格をどう変えるのか
政府が国内産業を守るために関税をかけると何が起こるのだろうか。
関税とは、輸入品に対して課される税である。ここでは、輸入品1単位あたりt 円の関税をかけると考える。国際価格がPw であれば、関税後の国内価格はPw + t になる。この関係を図で確認しよう。
図14-6 では関税によって国内価格が上がり、国内生産、国内消費、輸入量、政府税収、死荷重(取引が減ったり歪んだりすることで失われる社会的余剰)がどのように変わるのかを示している。
関税によって国内価格がPw からPw + t へ上がると、国内の生産者は生産量をx1からx'1へ増やすことができる。これは、国内産業を保護する効果である。一方、消費者は価格が高くなるため、消費量をx2からx'2へ減らす。
輸入量も減る。自由貿易ではx2 − x1 だけ輸入していたが、関税後はx'2− x'1だけしか輸入しない。輸入品1単位あたりt 円の関税がかかるので、政府にはt ×(x'2− x'1)の関税収入が入る。
したがって、関税には国内生産者を保護し、政府に税収をもたらす効果がある。一方、消費者余剰(消費者が財を購入したときに得したと考えられる金額の合計)は大きく減少する。その損失の一部は生産者余剰や税収に移るが、全てが移るわけではない。残った損失が、図の死荷重である。
関税の死荷重を生む「生産」と「消費」の2つのゆがみ
関税による死荷重は、大きく2つの理由から生じる。
第1に、生産面のゆがみである。関税によって国内価格が上がると本来なら国際価格Pwでは採算が合わない国内生産まで増えてしまう。つまり、国際的にはもっと安く作れる財を国内で高い費用をかけて作ることになる。
第2に、消費面のゆがみである。関税によって価格が上がると本来ならPw の価格で買っていた消費者が買わなくなる。消費者にとって価値がある取引が、価格上昇によって消えてしまうのである。
この2つのゆがみを合わせたものが、関税による死荷重である。
ただし、「関税は絶対に悪い」と単純に結論づける必要はない。
現実の政策では「食料安全保障」「雇用」「地域経済」「急激な産業衰退への対応」なども考慮される。
経済学が教えてくれるのは、関税によって誰が得をし、誰が損をし、社会全体でどのような費用が生じるのかを見えるようにすることである。













