貿易理論は、リカード以後どう広がったのか

リカードの比較優位説は、労働量の違いから貿易の利益を説明する理論であった。その後、貿易理論はさらに発展した。

エリ・ヘクシャー(1879-1952)とベルティル・オリーン(1899-1979)は、各国が持つ資本や労働などの生産要素の違いに注目し、なぜ国によって得意な財が異なるのかを説明しようとした。

さらに、現代の貿易理論では「規模の経済」「企業間の違い」「製品差別化」「グローバルなサプライチェーン」なども重視される。例えば、同じ種類の自動車を輸出も輸入もするような現実の貿易は、単純な比較優位だけでは説明しきれない。

それでも、比較優位は貿易を考えるための土台であり続けている。なぜなら、限られた資源をどこに使うべきか、何を自国で作り、何を他国から買うべきかという問いに最も基本的な見方を与えてくれるからである。

では、リカードの考え方を数値で確認してみよう。ポルトガルとイギリス、ワインと布という有名な例を使って見ていく。

投入係数で何が得意かがわかる

リカードが用いた有名な例に沿って、2つの国と2つの財を考える。

国はポルトガルとイギリス、財はワインと布である。各財を1単位作るために必要な労働量を次のように仮定する(表14-1)。この1単位を作るために必要な労働量を投入係数という。

<『この1冊でミクロとマクロが同時にわかる経済学』P.246>
<『この1冊でミクロとマクロが同時にわかる経済学』P.246>

表14-1を素直に見ると、ポルトガルはワインを80人で、布を90人で作ることができる。一方、イギリスはワインに120人、布に100人が必要である。

したがって、ポルトガルはワインでも布でも、イギリスより少ない労働で作れる。このように、ある国が他国より少ない労働や費用で財を作れるとき、その国はその財の生産に絶対優位を持つという。ここでは、ポルトガルはワインにも布にも絶対優位を持っている。