完璧主義という名の呪縛

shelaは結婚・出産を機に第一線から身を引き、札幌からも遠く離れた北海道の静かな田舎町へと移り住んだ。一人の母親として、家事と子育てに専念する日常には、かつてファンを熱狂させた「shela」の名前を呼ばれる機会など、どこにも存在しなかった。

「もう一生歌うことはないだろうと、自分の気持ちを押し殺して、気持ちに蓋をしていました」

そんな日常が2022年、突如動き出す。

きっかけは5ちゃんねる上の「なりすまし投稿」だった。《プロデューサーとよく揉めた》《shelaって名前で昔歌手やってた》など自分ではない誰かが、事実無根の話をする――その事態に戸惑うshelaの姿を見た25年来の友人・河村さんが「本物の歌を届けようよ」と、YouTube動画の制作を持ちかけたのだ。

その動画で十数年ぶりに歌ったのは、まずは3曲。それは「復活」に向けた壮大な計画ではなく、「かつて応援してくれた人に届きさえすればいい」という、純粋なメッセージだった。

公開後、ファンから「また歌ってほしい」「ライブがあったら絶対に行きたい」と反響が寄せられる。しかし、彼女の心は揺れた。

「私はまだ歌手として通用するのかな? ファンの方が想像しているshelaって…? 不完全な姿を見せて幻滅されたくない。その完璧主義が、自分の中で邪魔をしていました」

歌を届けたいという願いの裏で、shelaは「再始動できない理由」を心のどこかで探していた。十数年という空白がもたらした心の壁は、それほどまでに厚く高かった。

ブランク明けのshelaのライブにはたくさんのファンが訪れた(写真/本人提供)
ブランク明けのshelaのライブにはたくさんのファンが訪れた(写真/本人提供)
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