南京事件の追悼式典を欠席した習氏
存立危機事態と認定されれば、日本が直接攻撃を受けていなくても、集団的自衛権に基づいて自衛隊が武力を行使する道が開かれる。
歴代政権は台湾有事と存立危機事態の関係について明言を避けてきた。それだけに、この発言は中国側から見れば、日本が台湾有事への軍事的関与を公然と認めたも同然だった。
しかも、この言葉は官僚が用意した想定問答にはなく、高市氏自身の口から出たものだった。
中国側の反応は迅速で、生々しかった。答弁から数日後、大阪駐在の中国総領事・薛剣氏がSNSに、高市氏を指して「その汚らわしい首を、ためらわず斬り落とす」との趣旨の投稿を行った。
これに対して日本政府は強く抗議した。一国の総領事が日本の首相に対してこれほど極端な表現を用いるのは異例であり、高市発言に対する中国側の反発が外交上の儀礼を超えるほど激しかったことを物語っている。
その約1カ月後、中国江蘇省南京市で南京事件の犠牲者を悼む国家追悼式典が開かれた。しかし、習氏は出席せず、代理が列席した。高市首相への直接的な言及もなく、式典は全体として抑制された内容だった。
もっとも、習氏が国家主席として毎年この式典に出席してきたわけではなく、欠席だけで特別な政治的メッセージと断定することはできない。それでも、中国側が歴史問題を大規模に動員し、高市氏を名指しで攻撃する道を選ばなかった点は注目に値する。
強く非難すれば国内世論をあおることはできるが、日中関係を修復する余地は狭まる。中国指導部はこの時点で、歴史問題を全面に押し出すよりも、経済や人的交流を通じて段階的に圧力をかける方が得策だと判断していた可能性がある。
下落が止まらない住宅価格と「汚職疑惑」
その背景として無視できないのが、習氏を取り巻く国内情勢だ。
2026年4~6月期の中国の実質GDP成長率は前年同期比4.3%にとどまり、市場予想を下回った。3年超ぶりの低い伸びである。
若者の雇用不安や消費の停滞も続き、不動産不況から抜け出す兆しは見えない。ブルームバーグの特集によれば、不動産大手・中国恒大集団の関係者に実刑判決が出た後も、住宅価格の下落は止まっていない。
不動産は地方政府の財政や家計資産と深く結びついており、その低迷は単なる一業界の不振にとどまらない。
さらに深刻なのが軍内部の混乱だ。習氏と数十年にわたる親密な関係にあり、「義兄弟」と称されたこともある中央軍事委員会副主席の張又侠氏までが、汚職疑惑の調査対象となった。
2022年の中国共産党大会時点で中央軍事委員会にいた軍服組の委員6人は、2026年にはわずか1人になったという。













