なぜ日本への強硬姿勢が必要なのか

粛清は8月末にも続いた。人民解放軍出身の全国人民代表大会常務委員らが解任されたのだ。軍の腐敗を除き、習氏への忠誠を確保する狙いがある一方、相次ぐ幹部の失脚は、指揮系統や実戦能力に問題があることの裏返しとも受け取られている。

また、台湾政策だけでなく、習氏の後継体制を巡る不透明感も強めている。

こうした国内事情と対日強硬姿勢の間に直接的な因果関係が確認されているわけではない。だが、経済成長という従来の統治の正当性が揺らぐなかで、領土や主権、歴史問題を巡って「外部に譲歩しない指導者」という姿を示す政治的必要性は高まっている。

台湾と日本への強硬姿勢には、安全保障上の判断に加え、国内向けに指導者の強さと国家の結束を演出する側面があるとみることができる。

この10カ月、中国が切ってきた第一のカードは、日本産水産物だった。

2025年11月、日本産水産物の中国向け輸出は再び事実上停滞した。日本政府は、中国政府から正式に『輸入停止』との連絡を受けた事実はないとしていたが、再開後の水産物が通関しない状態が続いた。

水産物は、中国にとって比較的使いやすい圧力手段である。食品安全上の措置だと説明でき、日本の漁業者や地方経済に直接的な打撃を与えられるからだ。

ただ、日本側では中国以外への販路開拓や国内消費の拡大が進んだ。打撃は小さくないものの、輸入停止によって高市政権の台湾政策を変更させるまでには至っていない。

写真はイメージです
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水産物の次はレアアース、そして尖閣

第二は、レアアースを中心とする重要鉱物だ。中国から日本へのレアアース輸出は2026年に入ってから減少が続いた。日本企業は調達先の分散を進めてきたが、精製工程を含めれば中国への依存はなお大きい。

輸出量の減少は、電気自動車や電子部品、再生可能エネルギー、防衛装備など幅広い産業の供給網を揺さぶる。圧力は企業だけでなく個人にも及んだ。

2026年5月、富士電機グループの日本人社員2人が中国・大連で相次いで拘束され、6月に正式逮捕された。

逮捕の詳細や対日政策との直接的な関連は明らかではないが、中国側の輸出管理制度の運用を巡って不透明感を指摘する声があるなか、日本企業の社員が拘束されたことで、中国で事業を続ける企業に新たなリスクを突き付けた。企業は製品だけでなく、技術者を出張させること自体にも慎重にならざるを得ない。

第三は、沖縄県・尖閣諸島周辺での海洋圧力である。

米外交専門誌によると、中国海警局の船が尖閣諸島周辺の接続水域で確認された日数は、2025年に過去最多を記録した。連続確認が335日に達したとの分析もある。

中国公船が日常的に航行する状況をつくり、尖閣諸島が中国の管轄下にあるかのような外観を積み重ねる「サラミ戦術」とされる。軍事衝突には至らない水準で圧力をかけ続けるため、日本側は海上保安庁による警戒を常態化させざるを得ない。

ただし、中国側も偶発的な衝突や米国の介入を招く事態は避けている。圧力を強めながらも、衝突を回避するよう行動を抑制しているとの見方もある。