最後の一撃になる「店主の高齢化」

そして、利益が減っても、大手企業なら複数の社員や職人で店を回すことができる。
町の小規模なすし店はそうはいかない。

「すし店に限らず個人で経営している飲食店に共通して言えることですが、市場に行って素材を目利きし、仕込み、お客に提供するというひと通りの流れを、店主がほぼひとりでこなしている店もあります。

個人すし店のような小規模な店では、2番手、3番手の若手職人を育成する体制が整っているところも多くありません」

ここに、町のすし店というビジネスの強みと弱点が同居している。というのも、個人すし店の場合、店主自身が店の価値であることが多いのだ。

写真はイメージです(写真/AdobeStock)
写真はイメージです(写真/AdobeStock)

「ネタの目利きや技術はもちろん、店主が何にこだわるか、店構えや接客をどうするかまで含めて、その店ならではの魅力になっていました。

家族や夫婦など少人数で営まれ、“町のおすし屋さん”として地域に根付いて、何年、何十年と通う常連客に支えられてきた店もあります」

だが、「店主そのものが店の価値」ということは、裏を返せば、店主が働けなくなった途端に店を続けることが難しくなるということでもある。

帝国データバンクも、町の小規模なすし店では代表者が実質的に“唯一の職人”になっているケースが多く、代表者の高齢化や後継者難が事業継続を断念するきっかけになっていると指摘している。

「適切なタイミングで次世代に継承できればいいのですが、後継者がいなければそれもできません。ですから、高齢になって体力的に厳しくなったとき、それまでなんとか続けてきた店でも、『ここまでかな』と閉める決断につながってしまうんです」

つまり、高齢化だけで町のすし店が消えているわけではない。

回転ずしチェーンなどに客を奪われ、原材料費が上がっても十分な値上げができず、利益が少しずつ削られていく。その状態で店を支えてきた店主が高齢になり、継ぐ職人もいない。いくつもの問題が積み重なった末に、高齢化や後継者不在が“最後の一撃”になっているのである。