しかし「値上げすればいい」ができない町のすし店
それでも、店に客が来ているなら商売は続けられそうにも思える。しかし、ここでも町のすし店特有の難しさがある。
急速に上昇している原材料費の影響だ。
「主な食材である魚の価格は時期や魚種によって上下しますが、近年は鮮魚の仕入れ価格の上昇が目立っています。
さらに、中東情勢の不安定化を背景に、ナフサなど石油製品の供給不安も広がっています。プラスチック容器などの包装資材では価格上昇や調達難も起きていて、持ち帰りに使うパックや袋といったコストも上がっている。
以前と同じ値段で提供していたら、当然、利益は減ってしまいます」
もちろん、値上げすればコストアップを吸収することはできるが、町のすし店にとっては、それが簡単ではないのだ。
日本政策金融公庫が2022年7~9月期に行った調査では、すし店が抱える経営上の問題として最も多かったのが「仕入価格・人件費等の上昇を価格に転嫁困難」で、68.6%にのぼった。
「町のすし店は、ある意味で非常に難しい価格帯にいるんです。価格の安さでは、規模を生かして仕入れやオペレーションを効率化できる大手チェーンには勝ちにくい。
一方で、大幅に値上げをすれば、今度は高価格帯の店と比較されるようになります。長年通っている常連客が中心の店ほど、一気に価格を変えることも難しいでしょう」
帝国データバンクの調査でも、2025年度に赤字だったすし店は18.8%にとどまった一方、33.9%は前年度から利益を減らしていた。
つまり、「客がまったく来なくなって突然潰れる」というだけではない。
営業は続いている。常連もいる。それでも食材費や人件費が上がり、少しずつ利益だけが削られていく。そんな状況に置かれている店が少なくないのだ。
さらに、人手不足そのものが売り上げを削るケースもある。帝国データバンクによると、職人を確保できず、客単価の高い夜間の営業時間を短縮したり、定休日を増やしたりした結果、売り上げ減に直面したすし店もあるという。
客がいないから店を開けないのではない。客がいても、握る人がいないから営業できないのである。












