中国は「明日からここは中国領だ」と言う必要がない

中国は、いきなり「明日からここは中国領だ」と言う必要がない。まず歴史を掘る。法理を作る。研究者や党系メディアが「そもそも帰属には議論がある」と言い始める。

公式な領有権主張の一歩手前でも、相手国の社会に疑問を植え付けることはできる。沖縄やバタン諸島をめぐる今の動きを、その程度には重く受け止めておくべきだ。

だから、今回北京へ行く議員には、会談の前に目的を決めておいてほしい。沖縄が日本領であることを中国側に確認するのか。バタン諸島について中国政府の立場をただすのか。日比の境界画定交渉をなぜ「違法無効」とするのか説明を求めるのか。台湾海峡での武力による現状変更をやめるよう迫るのか。尖閣周辺の中国公船、日本人拘束の問題を扱うのか。

全部やる必要はない。今回は何を取りに行くのかを先に決めればいい。そして帰国後には、その目標に対して何を取れたのかを説明する。これがないと、外交の「成果」はいくらでも後から作れてしまう。

もちろん、訪中前に交渉目標をすべて世間にさらせという話ではない。交渉には相手に見せられない手の内がある。だが、だからといって目標そのものが曖昧でいいわけではない。

少なくとも議員団の内部では、「これを求める」「ここは譲らない」「この答えを取れれば成果とする」という物差しを持っておくべきである。

そうでなければ、たまたま中国側から出た発言を帰国後に拾い、「関係改善への一歩になった」「一定の理解を得た」と成果に仕立てることができる。最初にゴールがなければ、後からゴールポストをどこにでも立てられる。

「自分たちが最後のパイプを守る」という妙な使命感

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これは議員外交だけの問題ではない。政府外交を見る時にも同じ注意が必要である。外交交渉には公開できない部分が多く、国民が会談の全容をその場で検証することは難しい。結局、最初に目にするのは政府や参加した政治家自身による発表になる。

だからこそ「成果があった」という当事者の説明は、そのまま受け取るのではなく、何を要求していたのか、相手から何を引き出したのか、日本側は代わりに何を渡したのかまで見なければならない。

「率直な意見交換をした」「対話の重要性を確認した」「関係改善の一歩になった」といった言葉は便利だが、それだけでは成果の中身が何も分からない。

今回の訪中議員にも、そこは厳しく言っておきたい。「自分たちが最後のパイプを守る」という妙な使命感を持たない方がいい。