怖いのは主張の強さだけではない。主張の置き方である
さらに6月30日、広州の曁南大学でバタン諸島の主権を議論する会議が開かれた。
南京大学、浙江大学、中国社会科学院、中国南海研究院などの研究者が参加し、大学の公式発表は、会議が「国家の重大な戦略的需要」に応えるものだと説明している。そして参加者は、バタン諸島は法的に「我が国の台湾島に属する」と結論づけた。
フィリピン側は当然反発した。
無論、中国政府がバタン諸島の領有を正式宣言したわけではないが、中国の大学や研究機関で、フィリピン領の島を中国側に取り込む法理が組み立てられている事実は消えない。
ここで怖いのは、主張の強さだけではない。主張の置き方である。
沖縄については「中国領だ」と言い切らず、日本の主権取得は本当に正当だったのか、と問いを立てる。バタン諸島についても、中国外交部は島そのものの領有を宣言せず、まず周辺海域で中国の権利を主張し、学界が島の帰属を論じる。
この形なら、政府が正式な領有権主張を出していない段階でも、論点そのものは社会に残る。だから日本側も「政府の公式主張ではない」で思考を止めず、どこまでが政府方針で、どこからが党・大学・研究機関の発信なのかを分けながら見ておく必要がある。
習近平は「琉球との交流の縁が深い」
沖縄も妙な流れになっている。2023年、習近平は福建省勤務時代を振り返り、「琉球館、琉球墓を知っていた」「琉球との交流の縁が深い」という趣旨を語った。これも領有権主張ではない。
ところが2026年6月23日、共産党機関紙の人民日報は、中国社会科学院日本研究所の唐永亮研究員による長文を掲載した。そこでは1879年の琉球処分を19世紀の国際法に反するとし、カイロ宣言やポツダム宣言まで持ち出して、日本による沖縄統治の歴史的、法的な正当性に疑問を投げている。
この並びは警戒すべきだ。
習近平が領有を宣言し、その命令で一斉に動いている、とまでは確認できない。だが、国家主席が琉球との歴史的な縁を語り、党機関紙が琉球処分の正当性を攻撃し、別の大学や研究機関ではバタン諸島を台湾に属するとする理屈が作られ、中国外交部と海警は台湾東方海域で日比の動きを「違法」として押し返す。別々の話として片づけるには、話が近すぎる。













