なぜ一松氏だけが目の敵にされたのか
一松氏は将来の次官候補と目されてきたが、8月7日付で発令されたのは東京税関長への転出だった。
財務省においては、主税局長から国税庁長官に就いた者は財務次官に原則ならない。それと同様に東京税関長に転出した者が「次官コース」に復帰するのは難しいといわれている。
一方、宇波氏の次官昇格とともに、新しい主計局長には坂本氏が就き、3人の同局次長には中島朗洋、岩佐理、八幡道典各氏が就任することになった。前田努官房長や中山光輝総括審議官、阿久澤孝理財局長らの就任も財務省の想定通りだ。いわば、一松氏が「人身御供」となった形とも言える。
なぜ一松氏だけが目の敵にされたのかは定かではない。ただ、財務省幹部は「自分たちが一番正しい」と面従腹背であることも珍しくない。財政規律重視・減税反対の立場から時に言葉激しく政治家をねじ伏せることもある。
トップだった新川氏は心身ともに疲労が蓄積していたとされ、代わりに一松氏が矢面に立っていたからではないだろうか。官庁においては「次のトップ」を守るため、代わりに部下がヒール役を演じることがあるのだ。
高市首相は引き続き財務省にプレッシャーをかけるが…
「財務省嫌い」といわれる高市高市首相は昨年10月の政権発足後、しばらく政務担当の首相秘書官・飯田祐二前経済産業事務次官を除き秘書官の車への同乗も拒否した。
財務省からの秘書官である吉野維一郎氏は執務室にすら入れない日々が続き、さすがに今井尚哉内閣官房参与らの進言によって高市首相も最近は受け入れるようになっていった。
だが、今夏の財務省幹部人事をめぐる暗闘は決定的な亀裂になるとの見方は広がる。
「選挙公約は国民との約束だ」とする高市氏は引き続き財務省にプレッシャーをかけるが、年末には税制改正や来年度予算案の編成が待ち構える。「責任ある積極財政」を掲げる高市内閣としては財務省に一歩も譲れない場面だ。
首相は今秋の臨時国会を前に内閣改造や自民党の役員人事も行う考えで、財務相経験者の鈴木俊一幹事長の交代論もささやかれる。
年末の「第2ラウンド」は官邸が勝つのか、財務省が巻き返すのか。それとも玉虫色で終わるのか―。その行方は日本の進路を変えることになりそうだ。
文/竹橋大吉













